四国の乗り物1 線路と道路の二刀流

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DMV コロナ禍乗り越えて

バスモードで太平洋沿岸を走るDMV(2月3日、徳島県海陽町で)
バスモードで太平洋沿岸を走るDMV(2月3日、徳島県海陽町で)

 四方の海と深い山々、水量豊かな大河の恵みを受けて人々が暮らす四国は、個性的な乗り物が発展してきた。昨年12月には世界的に珍しいデュアル・モード・ビークル(DMV)が運行を始め、注目を集める。今回の「New門」は魅力ある四国の乗り物を紹介する。

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 線路と道路の両方を走り、徳島―高知県境で世界初の本格営業にこぎ着けたDMVは、昨年12月25日の営業開始当初は上々の滑り出しを見せた。しかし、1月に新型コロナウイルスの感染が急拡大し、ツアー客の予約キャンセルが相次ぐ。太平洋沿岸の過疎の町に明るい未来を運んでくると期待された夢の乗り物が、荒波に向かって走り出した。

 DMVを運行するのは徳島県が3500万円、高知県が1000万円を出資した、沿線自治体などとの第3セクター・阿佐海岸鉄道。主なルートは、いずれも徳島県海陽町の「阿波海南文化村」―「道の駅 宍喰ししくい 温泉」間の道路と鉄路。延長約15キロで高知県東洋町の 甲浦かんのうら 駅を経由する。土日と祝日の1往復は高知県・室戸岬まで運行する。

大海原の絶景

 DMV(定員22人)は青、緑、赤の計3台。青は太平洋の波、緑は徳島の特産スダチ、赤は高知の坂本龍馬と太陽をイメージしたという。運賃は阿波海南文化村から道の駅宍喰温泉まで大人800円(子ども400円)、室戸岬にある「海の駅とろむ」までは同2400円(同1200円)だ。

 車窓からの眺めはやはり絶景だ。阿波海南文化村をバスで出発し、国道55号を南下。1キロ先の阿波海南駅で、車輪を下ろしてバスから鉄道モードに切り替わる15秒間は、SFの世界にいるようだ。太平洋の大海原を左に見ながら、道の駅宍喰温泉までの40分間の旅は瞬く間に過ぎた。愛媛県新居浜市の酒類販売業の男性(27)は「四国の鉄道ファンには待望の乗り物。線路と道路を走るのは世界中でこれしかないから」と満足そうだった。

 徳島、高知両県東部はウミガメやサンゴ礁などの海洋生物に恵まれ、マリンスポーツが盛んだ。一方、過疎や少子高齢化が全国の中でも激しい地域とされる。

 阿佐海岸鉄道は、1992年の開業以来一度も黒字を計上できず、経営危機にも直面した。DMVへの完全切り替えに向け、従来の車両の運行最終年となった2020年度の利用客は約4万9000人、営業収益は765万円にとどまり、当期経常損失は約9100万円に達した。

上々の集客力

 バス型車両が線路を走る珍しさから「車両自体が観光資源」とされるDMVは活性化の切り札だった。開業当初の集客は上々で、徳島県によると、昨年12月25日~今年1月10日の約半月で約4700人が乗車した。

 徳島県は年間の乗客約7万5000人、営業収益は約2600万円に達し、黒字は難しいが、収支は約1400万円改善すると見込んでいた。同県次世代交通課は「開業時の盛り上がりを考えると観光の目玉として潜在能力は高い」と話す。

 だが、コロナ禍の急拡大で、1月11日以降の2週間の集客は約800人に激減。2月の団体予約25件のうち21件(400人、1月24日現在)がキャンセルとなった。

 道の駅宍喰温泉に隣接する宿泊施設「ホテルリビエラししくい」でも、2月の予約客約250人分が解約となった。ホテル側は、DMVを観光の起爆剤と考えていただけに「コロナが終わるまでは我慢が続く」と残念そうだ。

 徳島県は22年度当初予算案に1000万円を計上し、DMVを支援する。モードチェンジの間、外に出られない乗客のために車輪の出し入れの映像を車内に流し、鉄道ファンや観光客限定ツアーなどを計画するという。阿佐海岸鉄道の井原豊喜専務は「今は我慢のとき。準備期間をもらったと思ってコロナ禍を乗り越えたい」としている。(新谷諒真)

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