〈4〉幻の「薩摩ボタン」復活 直径2~5センチに現代描く

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

干支にちなんだ生き物が描かれた薩摩ボタン
干支にちなんだ生き物が描かれた薩摩ボタン

 直径数センチの小さなボタンに、絢爛けんらん豪華で色鮮やかな花鳥風月が描かれている。明治以降に海外で人気を博したものの、国内ではほとんど流通しなかったことから、関係者の間で幻と言われた「薩摩ボタン」だ。垂水市の室田志保さん(42)が現代に復活させて10年が過ぎた今、海外からも注文が寄せられるほどの人気工芸品となっている。

 薩摩ボタンは薩摩藩が外貨を獲得するため、欧州などに向けて作った薩摩焼素材のボタンとされる。明治以降、ジャポニズム(日本趣味)の一つとして海外で人気となり、「SATSUMA」の名で知られた。一方で国内ではその存在がほとんど知られず、次第に作り手もいなくなった。

 室田さんが薩摩ボタンを知ったのは、白薩摩焼の窯元で絵付けの仕事をしていた2003年頃。たまたま手にした雑誌に載っていた薩摩ボタンの写真に目を奪われた。興味を持って調べると、東京の博物館に数多く所蔵されていることがわかり、訪ねた。

 小さなボタンには、季節の風景や童服を着た子どもなど、当時の生活の様子が伝わる絵が描かれていた。浮世絵を思わせる独特のデザインにも感動し、「小さなボタンの中に宇宙を感じた」と振り返る。

 自分の手で復活させたいと考え、05年に独立。垂水市の空き家にアトリエを構え、制作を始めた。白薩摩焼の絵付け師としての経験はあったものの、筆を向かわせるのは直径わずか2~5センチの小さな“キャンバス”。1ミリほどの筆先に神経を集中させるのは簡単ではなかった。

 それでも「難しいことには、逆に燃える」という性格が原動力になり、ひたすら練習を重ねた。慢性的な肩こりと眼精疲労に悩まされながら、作品に自信が持てるようになったのは3年が過ぎた頃だった。

 07年、初めての個展を鹿児島市で開いた。薩摩ボタンを初めて見るという人がほとんどで、予想以上の反響が寄せられた。その後、世界中のユニークなボタンが集まる全米の大会に出品したことで、海外からの注文が一気に増えた。

 下絵を描いたら電気窯で焼き、再び線を入れる作業を2~3週間かけて行う。大量生産は不可能で、現在は月に30~50個を受注生産している。その分、一つ一つの作品に対しては時間をかけて向き合う。そうして描いたデザインは見る人の心を打ち、昨年10月にパリのイベントに出品した際は、地元のアーティストたちの高い関心を集めた。

 伝統を重んじながら、新たな挑戦にも意欲的だ。昨年12月に霧島市で開いた展示会では、直径2センチほどの小さなボタンにかわいらしいタッチで干支えとにちなんだ生き物などをあしらった作品が注目を集めた。

 ボタンには「今」を反映させることを心掛けている。「今のはやりが100年、150年後のアンティーク(骨董品)になる。だからこそ現代を描きたい」

 その目線は、次世代にもしっかりと向けられている。

無断転載・複製を禁じます
2036 0 かごしま発 2018/01/06 05:00:00 2018/01/06 05:00:00 鹿児島空港に展示された干支(えと)が描かれた薩摩ボタン https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180105-OYTAI50034-1.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

新着クーポン

NEW
参考画像
入泉料割引
NEW
参考画像
ご利用料金割引
NEW
参考画像
3080円2464円

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ