毛筆フォント 入魂40万字 さつまの84歳元看板職人

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新たなフォント制作のため、ほぼ毎日筆を執る坂口さん(さつま町で)=姫野陽平撮影
新たなフォント制作のため、ほぼ毎日筆を執る坂口さん(さつま町で)=姫野陽平撮影

 筆で書いたような文字をデジタル化した「毛筆フォント」。テレビ番組のテロップなどに使われるが、最近、さつま町のフォント制作会社「昭和書体」が手がける毛筆フォントが注目されている。所々にかすれが残る力強い書体で、人気漫画「鬼滅きめつやいば」のアニメなどに登場。元となる字を書くのは、かつて看板職人だった坂口綱紀さん(84)だ。これまで書いてきた文字は約40万字に上る。

 「燐」「琳」「麟」――。同町にある自宅には、漢字が書かれた半紙があちこちに並んでいた。新たなフォント制作のため、ほぼ毎日部屋にこもり、1日50字ほどを5、6時間かけて書く。

 昔から絵が得意で、中学卒業後に看板職人を目指し上京。30歳の頃にUターンし、看板会社を起こした。ただ、字は苦手だった。看板制作には字も欠かせないため、町中の看板の文字を半紙に写して収集。持ち帰っては毎日なぞる練習を繰り返し、腕を磨いた。

 転機は2006年に訪れる。坂口さんの文字を見た取引先の男性から、「これほどの字を書ける職人はほとんどいない。フォントにして残してはどうか」と提案された。その話を聞いた長男の茂樹さん(61)が同年、昭和書体の前身となる会社を設立。坂口さんが書いた漢字や平仮名、片仮名などをパソコンに読み取り、販売を始めた。

 これに、ゲーム会社「コーエーテクモゲームス」(横浜市)が注目。07年に発売した三国志をモチーフにしたゲーム「真・三國無双5」で国名の表記などに採用し、その後のシリーズでも使うようになった。

 アニメ「鬼滅の刃」やアニメの実写版映画「銀魂」でも登場人物の名前を紹介するテロップなどに使われ、作品ファンの間で話題になった。SNS上では「鬼滅の文字、手書きなんだって!」「力強くてすてき」など好意的な投稿が目立つ。

 これまでに販売した64種類のフォントのうち57種類を手がけた。一つのフォントを販売するには約7000字が必要で、坂口さんは計約40万字を一人で書いてきた。複数のフォントを一人で書き分けるのは珍しいという。

 坂口さんは「私にとって、文字を書くのは絵を描くような感覚で楽しい。体力が続く限り、これからも書き続けます」と力を込めた。

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1296757 0 ニュース 2020/06/24 05:00:00 2020/06/24 05:00:00 2020/06/24 05:00:00 フォントの魅力について話す綱紀さん(4月14日午後2時42分、さつま町で)=姫野陽平撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/06/20200623-OYTNI50018-T.jpg?type=thumbnail

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