ロボット産業低い認知度

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ゲーム感覚で楽しめる「TANO」でリハビリに励む患者ら(先月、藤沢市の湘南藤沢徳洲会病院で)
ゲーム感覚で楽しめる「TANO」でリハビリに励む患者ら(先月、藤沢市の湘南藤沢徳洲会病院で)

高額な商品一般普及に壁

 患者がテレビのモニター画面に向かって左右上下に手を伸ばすと、画面上の「分身」も同じように動き、降り注ぐ玉を手で割っていった。平塚市の「ラッキーソフト」が開発したリハビリ運動用の自立支援システム「TANO」。試験的に導入した藤沢市辻堂の湘南藤沢徳洲会病院では、ゲーム感覚でリハビリ運動に励めるとあって、患者に大好評だ。

 リハビリを担当する理学療法士の神野さくらさん(24)は「記録が毎回出るので、『次回はもっと良い記録を出したい』と目標が立てやすい。患者のやる気アップにつながる」と歓迎する。システムは、モニターの前に設置したセンサーが患者の計25か所の関節を感知し、体そのものがコントローラーとなる。

 森林の中の階段を上るなどゲーム感覚で取り組める約80種類のメニューがあり、通院患者の吉井昌和さん(62)は、「できれば自宅でもやってみたい。もっと普及が進み、多くの一般家庭で取り入れられるようになれば」と期待した。

 平塚市は、県が生活支援ロボットの実用化と普及を進める「さがみロボット産業特区」にあり、リハビリ運動用のシステムは税制上の支援措置などを受けて開発された。

 特区の指定地域は、平塚市を含め県中央部の10市2町。もともと中小企業によるものづくりが盛んな地域で、ロボット関連技術を有する企業が多かった。そこで県は地域経済を活性化させようと、2013年に国の地域活性化総合特区の指定を受けた。特区内で開発研究・実証実験を進める事業所は、税の軽減措置や優遇制度などを受けることができる。

 県が力を入れるのは、「介護・医療」「高齢者らの生活支援」「災害対応」に貢献するロボットの開発。超少子高齢化、切迫する自然災害に備えて、「ロボットと共生する社会」を掲げた。特区の第1期計画(13~17年)では、手や足の動きに支障がある人を補助するロボット、救助隊が足を踏み込めない災害現場で情報収集するロボットなど、18年3月現在で15件を商品化し、目標の「12件以上」を上回った。実証実験の件数も目標の90件の倍以上の186件に達した。

 ただ、県民の認知度は低い。県の14年度の意識調査では、ロボット産業特区を「知らなかった」と回答した県民は75・1%に上り、「知っていた」はわずか7・3%だった。さらに、商品化された15件は、病院など施設での利用を想定して開発され、一般家庭で使用するには高額だ。広く普及するまでの道のりは険しい。

 介護予防ロボット「PALRO」を開発して商品化した「富士ソフト」(横浜市)で企画販売を担当する高羽俊行さん(41)は、「作り手と使い手のマッチングなど“入り口”の仕組みはうまくいっている」と評価する一方、課題をあげる。「買ってもらうだけではなく、使ってもらうための“出口”の支援も重要。それがないと、産業としての継続が難しくなるのではないか」

 特区の正式名称は「さがみロボット産業特区―ロボットで支える県民のいのち―」で、県が第1期の5年間で優遇策などで投じたロボット産業振興費は約8億2000万円にのぼる。県議の一人の口調は厳しい。「ロボット産業には多くの税金が投じられている。しかし、県民が本当にロボット産業の恩恵を実感できているのか、これまでを総括する曲がり角にきている」

 (高梨しのぶ)

477338 1 かながわ 自治の現場 2019/03/08 05:00:00 2019/03/08 05:00:00 2019/03/08 05:00:00 さがみロボット産業特区の支援制度を活用して商品化された「TANO」を使い、ゲーム感覚でリハビリを楽しむ通院患者ら(藤沢市の湘南藤沢徳洲会病院で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190307-OYTAI50035-T.jpg?type=thumbnail

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