夜間中学外国人に需要

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試行錯誤を重ねて外国人の生徒に日本語を教える高橋教諭(先月、川崎市中原区の市立西中原中で)
試行錯誤を重ねて外国人の生徒に日本語を教える高橋教諭(先月、川崎市中原区の市立西中原中で)

財政、教員確保…設置及び腰

 「『に』と『へ』は、なにが、ちがいますか」。カンボジア人のソク・スライラプさん(19)は、相模原市中央区でボランティア団体が開いている日本語教室で、助詞の違いを熱心に尋ねた。「日本語をもっと勉強して、将来はパティシエになりたい」。その目は輝いていた。

 母国では家庭の事情で小学校も中学校も卒業できなかった。2016年に来日し、相模原市緑区に住んで弁当店で働いた。ボランティアによる日本語教室に週に2回通い続け、もっと身に付けたくて「夜間中学」を探した。しかし、市内にはないと分かり、今春からは東京都八王子市で働きながら近くの夜間中学で学ぶ。通勤時間は大幅に増えるが、「勉強したい」と意欲旺盛だ。

 夜間中学は「夜間学級」の通称で、もとは義務教育を修了できなかった日本人向けの学びの場だった。自治体が学校教育法施行令に基づいて設置し、公立中学校の校舎を使って夜間に授業をする。県内には横浜と川崎市に1校ずつ設置され、国際化で外国人や外国にルーツのある生徒が増えた。現在、横浜は約7割、川崎は約8割を占める。

 ただ、市内在住あるいは勤務が入学の要件で、他の自治体ではボランティアらが運営する「自主夜間中学」に頼っているのが実情だ。県教育委員会が、両市を除いた夜間中学の入学希望者160人に需要を尋ねた17年度の調査では、自治体別では相模原市が最多、厚木市が続き、外国籍の住民が多い県央地区の8市町村で118人と、全体(160人)の7割を超えた。

 改正入管難民法が4月1日に施行され、外国人労働者の受け入れ拡大が進めばさらに需要が高まるのは必至。政府も全都道府県での設置を目指すなど本腰を入れる。

 相模原市で設置を求める市民団体「相模原の夜間中学を考える会」の代表で、元中学校教諭の吉田恵一さん(66)は力説する。「日本で暮らすためには基礎的な日本語力が必要になる。外国籍の子供が増えればさらに需要は高まる」。同市は県教委の調査で希望者が多かったことも受け、前向きに設置の検討を進める。

 しかし、財政措置、教員の確保など課題は山積だ。相模原市教委は「具体的な検討はこれから」とし、厚木市教委は「市単独での設置は困難で、県にリードしてほしい」と訴えるが、県教委は「義務教育の中学校は市町村が主体」と及び腰だ。

 日本語を教える教員の育成も課題で、夜間中学を設置している川崎市立西中原中(中原区)では、数学や英語などの教員が独学で指導方法を模索している。生徒28人のうち24人が外国人。以前はそれぞれが担当学科の授業をしていたが、日本語の基礎力が足らずに理解は進まず、現在、1年生の授業は大半を日本語教育に割き、教員総出で日本語を教えている。

 英語担当の高橋太郎教諭(60)は、外国人にもなじみのある日本の人気アニメや音楽などを切り口に言葉ごとの微妙なニュアンスを教えるなど、試行錯誤を重ねる。「外国人に日本語を教えるとは、思いもしなかった」と当初を振り返る。安部賢一校長は現状を語る。「教師たちは頑張ってくれているが課題は多い」

 (田上拓明、市川憲司)

 (おわり)

478933 1 かながわ 自治の現場 2019/03/09 05:00:00 2019/03/09 05:00:00 2019/03/09 05:00:00 「もし自転車が壊れたら」「直します」と、会話の練習をする生徒(2月25日午後7時37分、川崎市中原区の市立西中原中で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190308-OYTAI50037-T.jpg?type=thumbnail

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