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息子との日々糧に 横浜の施設で事故死 障害者ガイドに母奮闘

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健人さんと過ごした日々をふり返る池田さん夫婦(横浜市港南区で)
健人さんと過ごした日々をふり返る池田さん夫婦(横浜市港南区で)
亡くなる3日前の健人さん(両親提供)
亡くなる3日前の健人さん(両親提供)

 横浜市港南区の池田啓子さん(52)と会社員の夫・政弘さん(53)は2年前の春、一人息子の健人さん(当時19歳)を福祉施設での入浴中の事故で亡くした。知的障害を伴う自閉症があり、慣れないところではパニックを起こす。子育てはちょっとだけ大変だったかもしれない。でも、宝物だった。啓子さんは今、健人さんと歩んだ経験を生かし、知的障害者ガイドヘルパーとして働いている。(中山知香)

 健人さんは3歳で自閉症と分かり、特別支援学校に進んだ。デジタルカメラで写真を撮るのが大好きで、自宅の窓から見える京急の電車によくレンズを向けていた。いつもニコニコしていたけれど、修学旅行や施設での宿泊は苦手。前夜には宿泊用の荷物を押し入れに隠していた。

 それでも、親子3人でたくさん出かけた。「かわいい子には旅をさせよ」だ。飛行機の搭乗口で大声をあげたり、新幹線でじっと座っていられず、車両間の自動ドアを何度も開閉させたり。いろいろありつつも、健人さんは旅先で落ち着くと、うれしそうにして、あちこちでカメラを構えていた。16歳のときには初の海外、香港旅行も達成した。

 2019年3月27日。港南区にある社会福祉法人型障害者地域活動ホーム「そよかぜの家」で、事故は起きた。1泊だけのショートステイで、職員が入浴中の健人さんから目を離した間の溺死だった。自宅に帰ってきたら、次の日には3人で、東京ディズニーシーに行こうねと約束していた。

 運営法人が事故検証のために設置した第三者委員会は、入浴中にはしっかり付き添うという内規に違反していたと指摘する調査報告書をまとめた。その概要は先月、法人のホームページに、職員教育の充実や浴室の改修を含む再発防止策と合わせて掲載された。

 健人さんを失って1か月がたった頃、啓子さんは「知的障害者ガイドヘルパー」の資格を取るため、県の研修を受け始めた。障害のある人の外出時に付き添い、案内をする仕事だ。「あかりの消えたような毎日を過ごしていても、あの子は戻って来ないし、喜ばない」。同じような事故を繰り返させないためにも、19年間、健人さんを育てた経験を生かしたいと思った。

 その年の夏、社会福祉法人「みどりのその」(磯子区)で働き始め、知的障害がある子供の通学のサポートなどを続ける。障害のある人が働き、社会参加することを支援する事業所「ひばり茶屋」(磯子区)では、調理や接客をする利用者を見守っている。

 あまり笑わない子が笑顔を見せてくれたり、「池田さんと一緒がいい」と言ってくれたり。「わたしの方が救われている」と啓子さんは話す。そんな母の姿に、空の上からきっと、健人さんがカメラを向けている。

 健人さんが亡くなる事故が起きた「社会福祉法人型障害者地域活動ホーム」は、横浜市が社会福祉法人に市有地を無償貸与し、整備費や運営費なども補助することで設置・運営を支援する市独自の事業だ。「障害児・者とその家族の生活を支援する拠点」として1999年から順次開所し、現在、市内の全18区に1か所ずつある。通所やショートステイの受け入れのほか、各種相談に応じている。

 旭区のホーム「サポートセンター連」の白鳥基裕センター長によると、年齢や障害の程度といった利用条件は各施設の判断に委ねられており、公立施設よりも柔軟性があるが、その分、幅広いスキルや経験が職員に求められる。センター長は「現場は常に人手不足。職員の専門性が足りないこともある」と打ち明ける。

 和泉短大の鈴木敏彦教授(社会福祉学)は「民設民営でも、横浜市の事業。サービスや職員の質を維持するため、市が各施設の活動内容を評価して結果次第で改善を求めるなど、より積極的に関わっていくべきだ」と指摘する。

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1957756 0 ニュース 2021/04/03 05:00:00 2021/04/03 05:00:00 2021/04/03 05:00:00 健人さんの思い出の品を手に、思いを語る池田さん夫婦(10日午後7時3分、横浜市港南区で)=中山知香撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210402-OYTNI50051-T.jpg?type=thumbnail

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