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感染対策 学びに安心感

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 今春以降、オンラインによる遠隔授業を続けていた多くの大学が、後期からキャンパスでの対面授業を再開させている。新型コロナウイルスの感染防止と、議論や実習などを伴う活発な学びをどう両立させるのか。取り組みを追った。(編集委員 沢田泰子、生活教育部 元永達夫)

 

中央席の使用が禁止された教室(20日、関西国際大で)=枡田直也撮影
中央席の使用が禁止された教室(20日、関西国際大で)=枡田直也撮影

■安全の可視化

 校舎入り口に設置したサーモグラフィーカメラで学生を一人ずつ検温し、国の接触確認アプリ「COCOA(ココア)」が登録されているかチェックする。20日、関西国際大の尼崎キャンパス(兵庫県尼崎市)。9月下旬からの秋学期で原則対面授業をしており、感染予防に細心の注意を払う。

 「幼児教育方法論」の授業では、144人収容の教室にマスク姿の約70人が集まった。3人掛けの机の中央に座らないようテープが貼られ、隣の学生と距離を置く。「幼児にとっての遊びを通した学びを実現するには」。椋田善之准教授(36)が問いかけると、学生たちは各自で考えたあと、周囲と意見を交わした。「子供の気づきを大切にする」「生き物を育てる」

 原則遠隔授業で始まった春学期は6月から、学生が対面か遠隔かを選ぶハイブリッド型に。教育学部3年原田真歩まほさん(20)は「オンライン授業は移動がないのが楽でよかったが、模擬実習などができなかったのが残念だった。対面授業は友人に会えるのもうれしい」と言う。

 秋学期は医師の判断などで対面授業の受講が難しい場合を除き、ほぼ全学生がキャンパスで学んでいる。濱名篤学長は「知識の伝達だけでなく、学びの充実を図るには対面授業が不可欠。安全対策を可視化し、安心して学べるように工夫を重ねている。自分の身を守りながら社会生活を送るすべを身につけるのも大学の学びの一つ」と語る。

 

携帯型パーティションを組み立てる学生たち(7日、大阪市立大で)
携帯型パーティションを組み立てる学生たち(7日、大阪市立大で)

■人数に応じて

 大学ではグループで議論する授業が多く、人数に応じた柔軟な対策も必要だ。

 大阪市立大は折り畳み傘ほどのサイズに収納でき、数分で組み立てられる携帯型パーティションを導入。グループ討議などの際に活用する。7日、地域貢献の方策を探る「大阪の知」の授業で、1~3年生26人がアルミ製のフレームにビニールの透明シートを張って、他の学生との間に設置。グループ内で自己紹介や講義を選んだ理由などを話し合った。

 同大学は後期から、3割ほどの授業で対面が再開された。経済学部1年大島万葉さん(19)は「組み立てが簡単で、守られている安心感があった。顔を合わせて話し合えるのは有意義」と充実した表情で話す。

 パーティションは医師でもある荒川哲男学長が考案し、中小企業の技術力による新たな医療機器の開発で大阪活性化を目指す「ものづくり医療コンソーシアム」に参加する大阪府内の2業者が試作。「感染が心配で学生が大学に来られないという状況をなくしたい。感染防止策を徹底し、学生の本分である議論を盛んに交わしてほしい」と荒川学長。同大学では、学生、教職員の希望者全員にコロナのPCR検査も行った。

 

アクリル板越しに説明するチアリーディング部員(6日、桃山学院大で)
アクリル板越しに説明するチアリーディング部員(6日、桃山学院大で)

■半年遅れの新歓

 キャンパスでは、半年遅れで新入生を歓迎する活動も繰り広げられている。

 桃山学院大(大阪府和泉市)では5、6の両日、クラブやサークルの勧誘活動があり、約30団体ずつが参加。大声で呼びかけたり、チラシを配布したりは自粛し、アクリル板越しに活動内容を紹介した。2日間で1年生計約450人が訪れた。国際教養学部1年坂本有紀乃さん(19)は「ようやく大学生の実感が湧いた。部活で友達の輪を広げたい」と期待していた。

 関西学院大(兵庫県西宮市)でも1日から約3週間、各日最大18団体までに制限して部員を募集。新入生と話す際も2メートルの距離をとり、15分未満に限る対策を徹底した。

 

■大半が対面・遠隔併用

 文部科学省は後期以降、対面を前提とするよう各大学に通知している。同省が8~9月に大学など1060校に後期の授業方針を尋ねた調査では、全体の19.3%が全面対面、80.1%が「対面・遠隔を併用」と回答。併用でも遠隔の割合がほとんどなどとした大学もあり、同省は対面の割合が低かった約380校の状況を調査し、11月に公表する方針だ。

 対面授業を再開してキャンパスに学生が集まると、感染者が出た場合に広がる恐れがあり、迅速な対応が求められる。関西大(大阪府吹田市)は関連のある複数の学生の感染が判明した当日の15日、積極的予防措置として、同じ学科、学年の学生全員に自宅待機を通知した。その後感染者が増え、待機の対象者も拡大。前田裕学長は「感染が広がるのを止めるための措置。対面授業と感染予防を両立させるためにも、学内外での対策を改めて徹底したい」と話す。

 

 

 

 

 

◇建築家・瀧の足跡紹介

 京都工芸繊維大(京都市)の美術工芸資料館で、新型コロナウイルスの影響で中断していた企画展「建築家瀧光夫の仕事」が開かれている。設計原図のほか、代表作の一つ、服部緑地都市緑化植物園(大阪府豊中市)の図面から同大学の学生が製作した建築模型など約130点が並ぶ。

 瀧は1970年の大阪万博で建築家・丹下健三のもと、会場設計に従事。2016年に亡くなり、同大学が遺族から原図などを寄贈された。松隈洋教授は「緑と建築の対話を追求した作品から、学生が都市のあり方を考える機会になれば」と話す。入館料は一般200円、大学生150円。12月12日まで。

 

 

 

◇阪大の学生ら生活拠点

 大阪大の留学生や日本人学生、教職員らが生活する「グローバルビレッジ津雲台」(大阪府吹田市)が完成した。

 老朽化していた教職員の宿舎を取り壊し、跡地約2万3800平方メートルに民間資金を活用して整備。国際学生寮(300室)や、教職員宿舎(400室)のほか、民間の社会福祉施設や医療施設、賃貸住宅などが並んでいる。阪大教員による公開セミナーなども実施するという。14日に開かれた式典では、西尾章治郎学長が「異なる言語、文化的背景をもつ学生や教職員が同じ場所で生活し、市民との交流も期待できる。多様性を育む環境を充実させたい」と述べた。

 

 

 

 

 

◎「月刊大学」は原則毎月第4木曜日に掲載します。ご意見や、大学の話題をお寄せください。〒530・8551読売新聞大阪本社生活教育部(ファクス06・6365・7521、メールo-kyouiku@yomiuri.com)へ。

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1578748 1 月刊大学 2020/10/22 15:00:00 2020/10/26 16:20:33 2020/10/26 16:20:33 机の中央の席を使用せず間隔を空けて講義を受ける学生ら(20日、兵庫県尼崎市の関西国際大で)=枡田直也撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201026-OYTAI50003-T.jpg?type=thumbnail

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