地域と外資ともに成長を(ウェイン・スーパク キャタピラー油圧ショベル開発本部長)

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ウェイン・スーパク・キャタピラー油圧ショベル開発本部長
ウェイン・スーパク・キャタピラー油圧ショベル開発本部長

 よく聞かれる質問の一つが、「米国企業のキャタピラーがなぜ日本に、しかも兵庫県明石市に製造開発拠点を持っているのか」というものだ。

 話は1960年代に遡る。日本は、64年の東京オリンピック開催に向けて大規模なインフラ(社会基盤)整備が進むなど高度経済成長期の真っただ中だった。我々が建設機械の世界市場のリーダーとなるためには、勤勉な人材と高度な技術が豊富で、成長市場でもある日本に拠点を持つことが重要だと考えた。

 その中で、日本初の国産油圧ショベルを明石で製造した三菱重工業と手を組むのは当然の選択だったと言える。63年に合弁会社を設立して以降、三菱重工とは長くパートナー関係にあったが、2012年にキャタピラーが100%株式を取得した。

 現在に至るまで、明石事業所は、グループの重要拠点であり続けている。油圧ショベルの開発を一手に担い、基幹工場でもある。グループ幹部に明石の駐在経験者が多いことからも、その重要性が分かってもらえるだろう。

 明石の優位性は、長い歴史の中で高い開発能力が蓄積されてきたことだ。加えて、部品などを供給する150社余りの企業と密接な関係を築いてきたことにもある。

 私自身は08~11年に明石で勤務し、14年から再び駐在している。他者を敬う文化や、飲食店でのおもてなしなど、感嘆させられることが多い。

 例えば、レストランチェーン店でも店員は自分の報酬をはるかに超えたサービスを提供してくれる。街を歩いていて困りごとがあっても、見知らぬ人が親切に助けてくれる。道路標識などの英語表記も増え、問題ない。

 こうした相手を敬う姿勢や効率の良さは、我々の取引先にも共通している。部品メーカーは高品質の部品を指定の期日に届けてくれるし、輸出のための通関手続きや船積みもスムーズだ。

 キャタピラーは部品メーカーや販売会社を含む地元経済と信頼関係を築いている。明石では1500人強の雇用を生み出している。

「明石大橋」 絵・宮本信代
「明石大橋」 絵・宮本信代

 とはいえ、日本企業に比べると知名度は低い。キャタピラーのことをよく知ってもらうため、定期的に工場見学やVR(仮想現実)体験ワークショップ、小学生を対象にした見学会、中高校生を対象にした職場体験を開いている。地域向け夏祭りなどの行事も開催している。今年は、「リケジョ(理系女子)」を応援する「STEM賞=Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)」を創設した。

 取引先と定期的に会議を開くなどして、ビジネスパートナーとして相互の信頼醸成に力を入れている。日本の部品メーカーは高い品質を誇るが、やや保守的な面もある。世界の変化や進歩のスピードにあわせて、経済や需要状況に柔軟に対応できるよう一緒に努力をしている。

 こうした取り組みが、お客様の満足度の高い新製品を作る原動力となる。例えば、油圧ショベルの最新モデルは従来よりもメンテナンスしやすいように設計した。これにより、販売会社が要望などに迅速に対応でき、顧客満足度も向上する。

 グローバル企業は地球規模で開発・製造拠点の最適化を続ける。関西が拠点として投資され続けるためには、立地競争力を常に高めていくことも必要となる。

 創業当時の高度成長期に整備された道路、橋などは半世紀を経た現在では老朽化が進み、運搬重量制限を守るために、機械を分割しないと港湾まで運べないケースも出ている。投資意欲を失わせないためにも、インフラの整備や更新を期待したい。

 関西に根付いた外資企業として外資と日本の双方の長所を生かし、地域に貢献し続けたい。そうすることによって、我々のビジネスもさらに発展させることができるし、外国からの投資を促すことにもつながるだろう。

 優秀な取引先の海外展開も手助けし、関西発グローバル規模の成功に向けて、ともに成長する関係を築いていきたい。 

 

◇Wayne Supak 1989年にキャタピラーに入社。試験・開発責任者、エンジニアリングテクニカルマネジャーを歴任し、2014年に2度目となる明石駐在に。テキサス州出身。54歳。

23091 0 広論 2018/05/19 05:00:00 2018/05/19 05:00:00 2018/05/19 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180523-OYTAI50011-T.jpg?type=thumbnail

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