AI活用売れ行き見極め

(下)気象データで食品ロス減

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 鍋つゆ、厚揚げ、アイスもなか……。昭和の時代から親しまれた食品の生産や出荷の管理に、今では最先端技術が生かされている。高精度の気象予測やツイッター、人工知能(AI)を駆使して需要を見極め、生産コストを抑えて食品の廃棄も減らしている。

 「一喜一憂しない。シーズンを通せば回復できる」

 先月上旬、全国的に季節はずれの暖かさが続いた。食品大手「ミツカン」(愛知県半田市)の冬の主力商品「鍋つゆ」の売れ行きが心配されたが、生産物流本部の岡本洋忠部長(45)は冷静だった。

 自信の背景には、日本気象協会(東京都豊島区)の商品需要予測サービスがある。手元に届いた15週先までの週間予測では、気温が一時的に平年より5度近く上がり、売り上げが2割ほど減ることは織り込み済みだったからだ。その後は寒さがぶり返し、需要の回復が見込まれていた。

 2014~16年度、夏に販売する「冷やし中華のつゆ」で実証実験に参加。2週間先までの予測と売り上げがほぼ一致し、前年比2割ずつ在庫が減った。今は鍋つゆも対象に加え、近畿や中国など全国11地域で情報提供を受ける。岡本さんは「経験頼みの時代に比べ、根拠と確実性が格段に増した」と信頼を寄せる。

   ◇

 日本気象協会は17年にサービスを事業化し、これまでに約30社と契約を結んだ。

 豆腐メーカー「相模屋食料」(前橋市)は、夏は寄せ豆腐、冬は厚揚げの4日後までの需要を予測できる「豆腐指数」を利用。森永製菓(東京都港区)は一年を通して看板商品のアイス「チョコモナカジャンボ」で活用する。日がたつと皮のパリパリ感が損なわれるため、小まめな生産調整が欠かせないという。

 予測には、日本全国に張り巡らされた気象庁の地域気象観測システム「アメダス」などの観測値のほか、世界最高の精度を誇る欧州中期予報センター(英国)による地球規模の気象予測なども利用。食品の生産実績などを加え、地域別に需要を算出する。

 日本気象協会先進事業課の中野俊夫プロジェクトリーダー(43)によると、気象データを使った需要予測は平成初頭の1990年代に登場したが、当時は「天気予報は当たらない」とみられ、普及しなかったという。「観測技術の向上で、精度がここ15年間で30%も上がり、ようやく機運が高まった」と指摘する。

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 データだけでは予測できない要素もある。実際の気温と体感気温とのずれだ。同じ気温でも、前日との寒暖差や季節などによって感じ方が違い、売り上げも変わる。そこでツイッター上の膨大な「つぶやき」を解析し、予測を補正。さらにAIに過去の気象と消費量の相関を学習させ、精度の一層の向上を図った。

 昨秋にはNEC(東京都港区)と組み、判断した過程がわかるAIを導入した。NECの担当者は「商品によっては平均気温より最低気温に需要が反応するなど、新たな『気づき』をもたらしてくれるのも好評」と胸を張る。

 中野さんによると、気象リスクは全産業の3分の1に及ぶという。サービスが普及すれば、売れずに捨てる「食品ロス」や品切れを起こす「機会ロス」の回避に伴う利益が、国内全体で年間約1800億円にも上ると見込まれる。

 「食品廃棄物だけでなく、その生産や廃棄に伴う温室効果ガスも大幅に減らせるなど、地球環境の保全にも貢献できる」と強調する。

(この連載は矢沢寛茂、冬木晶、藤沢一紀が担当しました)

 ◇日本の観測体制世界有数

 気象観測は、地球上空の気象衛星と、地上に巡らせた観測網が両輪だ。気象災害と常に隣り合わせの日本で、気象庁は世界有数の観測体制を整えてきた。

 気象予報を大きく変えたのは、1965~99年に運用された富士山レーダーだ。800キロ先まで雨量を探知でき、特に台風の監視に活躍した。

 78年には気象衛星「ひまわり」の運用がスタート。当初は雲と風の動きを追う程度だったが、2015年に登場したひまわり8号は、1日の観測回数が初号機の70倍以上の576回に増加。画像も高精細のカラー表示が可能になった。

 「アメダス」は、温度計や風向風速計、雨量計などを備えた無人観測システムで、国内計1300か所に配置。大雨や暴風などの注意報や警報の判断にも利用される。気象レーダーは20か所にあり、局地的豪雨などをいち早く捉える役割がある。

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61618 0 扉を開く ハイテク生活技術 2019/01/18 05:00:00 2019/01/18 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190118-OYTAI50000-T.jpg?type=thumbnail

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