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不法残留 バイト漬け、ベトナム人留学生 借金抱え

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フンが収容されている大阪入管。フンは強制送還される日を待っている。かばん2個の荷物はすでに送り返されたという(23日、大阪市住之江区で)=枡田直也撮影
フンが収容されている大阪入管。フンは強制送還される日を待っている。かばん2個の荷物はすでに送り返されたという(23日、大阪市住之江区で)=枡田直也撮影

 外国人留学生らが来日時に背負った借金を返済するため失踪する――。近年騒がれている「消えた留学生問題」では、被害者としての側面を併せ持つ留学生もいる。12月14日、大阪地裁332号法廷に立ったベトナム人の男も日本語学校から姿を消し、「ヤミ就労」に身を投じていた。果たして男は「被害者」だったのか。

 ベトナム国籍のグエン・ヴァン・フン(33)(仮名)が来日したのは2013年4月。日本にいられる期間は1年3か月だったが、期限が切れてから6年以上とどまり続けた。今年10月、大阪市内で警察官に職務質問され、入管難民法違反で逮捕、起訴された。

 弁護人の被告人質問。フンは通訳人の声が入るイヤホンに集中し、ベトナム語で答えていく。

 「アルバイトしたお金はどうしていましたか」

 「生活費に使い、残りは借金を返しました」

 「借金とは」

 「日本に行くため。100万円」

学費も払えず

 3人きょうだいの末っ子として貧しい農村部で生まれた。仕事はなく、良い暮らしを望むなら出稼ぎしかない。留学仲介業者から「日本は語学を学びながら月15万~20万円稼げる」と聞いた。2、3か月で現地の平均年収を超える額だった。

 金もうけだけではない。日本語を身につけ、いい仕事に就く――。そんな夢を抱き、25歳で東京の日本語学校に入学。弁当盛りつけのアルバイトを始めたが、留学生は週28時間を超えて働くことは許されない。

 月収は8万~10万円。仲介業者への手数料が上乗せされた借金の返済どころか、次年度分の学費の支払いさえおぼつかなかった。半年後には学校に通わなくなり、在留期限を過ぎた14年7月以降は各地で息を潜めてヤミ就労を続けた。

 愛知では身を寄せたベトナム人宅から、パチンコ台の組み立てに通った。茨城でやったのはプラスチックゴミを溶かす仕事。「不法残留仲間」らと廃棄物処理場近くのコンテナに住み込んだ。ただ、時給は最低賃金水準の780円だった。

 就労に必要な在留カードも偽造して所持していたが、提示を求める雇用主は少なかった。廃棄物処理場にいた日本人は自らの名前さえ明かさなかった。

 昨年からは、山梨の山中のコンクリート工場で働いたが、コロナが蔓延まんえんし始めた今年3月に解雇された。流れ着いた大阪でも仕事はなかった。

「再来日したい」

 検察官が質問する。

 「借金は残っている?」

 「完済した」

 「いつ」

 「2015年か16年」

 フンは来日2~3年で借金を返し終わったことを認めた。その後も母国に送金を続けていたかどうかを問われると、「たまにしか送れなかった」と釈明し、「(送金は)母の病気を治療するため」と訴えた。

 そして、再び来日したいかと聞かれ、こう答えた。「本心は日本に戻りたい」

 12月21日。通訳を介して言い渡された判決は、懲役2年6月、執行猶予4年。閉廷と同時に、入管職員2人が柵の中に入る。戸惑った様子のフンは、職員に手招きされ、関係者用の出入り口に消えていった。

 フンはその日のうちに大阪入管に収容された。入管には、本国に強制送還されるまで一時的に施設外で生活できる「仮放免」制度がある。ただ、手続きには身元保証人が必要だ。日本で約7年半暮らしたフンに、依頼できる知人は一人もいなかった。(敬称略)

今年7月8万2616人

 法務省の調査では、外国人の出入国管理記録などに基づく不法残留者は今年7月時点で8万2616人。このうち最も多いのがベトナム人の1万5511人(19%)だった。不法残留の留学生全5170人の中でも、ベトナム人が7割近い3525人を占めている。

 ベトナム人が多い背景には、同国が外貨獲得のため、積極的に人材を送り出していることもあるとされる。

 法務省は昨年、在留資格を取り消された生徒らが3年連続で5%を超えるなどした日本語学校について、新たな留学生の受け入れを認めないことを決めた。

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使い方
1726380 0 332号法廷から 2020/12/24 15:00:00 2020/12/24 15:00:00 フンが収容されている大阪入管。フンは強制送還される日を待っている。かばん2個の荷物はすでに送り返されたという(23日、大阪市住之江区で)=枡田直也撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201224-OYTAI50001-T.jpg?type=thumbnail

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