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柵の向こう 極悪人じゃない

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 再び覚醒剤に手を出した男、盗みを繰り返す女……。大阪地裁332号法廷に立った被告たちは、普通の人とさして変わりなく見えた。なぜ事件を防げなかったのか。連載の終わりに、裁判官席と傍聴席と、それぞれの場所から被告を見つめてきた2人に、思いや裁判から学べることを聞いた。

裁判ウォッチャーの芸人 ()()(ざん)(だい)(ふん)()さん 46

 1974年生まれ。傍聴回数は年800回を超える。著書に「B級裁判傍聴記」など。1月29日には大阪市内で傍聴をテーマにしたトークライブも予定している。
 1974年生まれ。傍聴回数は年800回を超える。著書に「B級裁判傍聴記」など。1月29日には大阪市内で傍聴をテーマにしたトークライブも予定している。

 初めて傍聴したのは1999年、オウム真理教教祖の裁判でした。所属事務所絡みの仕事で傍聴券の抽選に無理やり並ばされ、当たり券が余ったからお前も入れ、と。東京地裁で一番大きい104号法廷でした。

 でも、どの事件のどの部分を話してるのか、よくわからなくて。午後から車を盗んだ男の裁判を傍聴したんです。男は被告人質問で突然、「自分は石原裕次郎の弟で――」と語り始めた。ふざけてるんじゃなくて、熱狂的な裕次郎マニアのようでした。なのに裁判官は真面目な顔で「あなた、裕次郎の弟じゃないですよね?」って。傍聴席で「わかるでしょ」とつっこみました。

 厳粛な法廷でのバカバカしいやり取りが面白くて。ネタ探しにピッタリだと思い毎日通うことにしました。

 法廷では3、4か月遅れの世相が見える。さい銭150円を盗んだホームレスのおじいちゃんの動機は「コロナで炊き出しがなくなったから」。この連載でも取り上げられていた、コロナの一律給付金で違法薬物を買った被告の裁判もいくつか見ましたよ。

 柵の向こうにいるのは極悪人というイメージでした。でも、今は、隣に住んでいてもおかしくない人もたくさんいると思う。やったことはもちろん悪いけど、人間って全部が全部、ちゃんとしてるわけじゃない。

 ちょっとしたことがきっかけで柵の向こうにいる。それは俺に訪れないとも限らない。そしたら、俺もこの人も同じじゃん、って。

 傍聴を通じて、ちょっとは人に優しくなれたのかもしれないですね。

被告の事情 真剣に考え判決

元東京高裁判事の弁護士 ()(とこ)(まさ)(のり)さん 65

 1955年生まれ。82年に仙台地裁判事補となり、東京高裁判事などを歴任。2012年の退官後、郷里の和歌山で弁護士活動を続ける。
 1955年生まれ。82年に仙台地裁判事補となり、東京高裁判事などを歴任。2012年の退官後、郷里の和歌山で弁護士活動を続ける。

 30年の裁判官人生で担当した刑事裁判のうち、世間が注目する事件はごくわずか。傍聴席に誰もいない、今回の連載のような裁判がほとんどです。それでも、被告が歩んだ人生も、抱える問題も一人ひとり違います。毎回、真剣勝負でした。

 起訴事実に争いのない事件の量刑判断では、前科の有無、手口の悪質性、結果の重大性などを過去の同種事件の量刑と比較して「枠」を固めます。公平性の観点からですが、機械的に当てはめることはありません。

 心を砕くのは、被告が罪と向き合い、償いの気持ちを持ってもらうこと。そこで、法廷では自分の内心が被告に伝わるような質問も、あえてしていました。

 「ついやってしまう」という弁明には、「つい」の理由を尋ねます。供述内容が信用できないと感じれば、「本当にそんなことあるの」と、突っ込むこともありました。意見を十分に述べ、裁判官にも理解され、その延長線上に判決があると実感してほしいからです。

 家庭環境に恵まれず、貧困や障害といった事情を抱えた被告は少なくありません。いかに被告の立場に身を置いて考えることができるかが大事になります。言うはやすく、行うはかたしですが、常にその努力を払うことで「反省し、立ち直ってほしい」という思いが通じると信じていました。

 法廷では社会のひずみや矛盾も見え隠れします。それらを知ることが、更生しようとする被告を受け入れる温かみある社会を作ることにつながると思います。

傍聴 誰でも可能

 刑事裁判の傍聴には、事前の申し込みや身分証の提示などの特別な手続きはいらない。裁判所の入り口で所持品検査を受けた後、好きな法廷に入って傍聴席に座るだけだ。当日どんな裁判があるかは、法廷の前に掲示されている開廷表で確認できる。被告や裁判官の名前、起訴罪名などが開始時刻順に記されている。

 傍聴中の私語は禁止だ。ノートなどにメモを取ることはできるが、スマートフォンやタブレット端末は使えない。

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使い方
1729763 0 332号法廷から 2020/12/25 15:00:00 2020/12/25 15:00:00 多くの裁判を傍聴して話のネタにしているお笑い芸人の阿曽山大噴火さん(12月15日、東京都千代田区で)=米田育広撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201225-OYTAI50002-T.jpg?type=thumbnail

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