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<1>虐待していないのに・・・突然我が子と引き離し

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 児童相談所が、子どもを家庭から引き離す「一時保護」は、虐待に直面する子どもの命を守る切り札である反面、判断を誤れば、親子の関係に深い傷を残す危険性もはらむ。児童虐待が増加の一途をたどる中、最前線で迅速かつ的確な対応を迫られる児相の現場を追った。

 それは家族でささやかにクリスマスを祝った翌日のことだった。

 2019年12月26日、栃木県の総合病院の面談室。斉田真治さん(34)と幸恵さん(31)夫妻(仮名)は、訪ねてきた県の児童相談所の職員に「虐待の可能性があり、お子さんを一時保護します」と告げられた。

 「していません」。夫妻は訴えたが、職員は「調査の必要がある」と、硬い表情を崩さなかった。

 生後3か月だった長男の浩輔ちゃん(同)が病院に運ばれたのは3週間前。自宅でミルクを飲んでいた際、けいれんを起こした。診断は、急性硬膜下血腫と眼底出血。医師からは目に後遺症が残る恐れがあると言われた。

 児相が虐待を疑ったのは、原因が不明だったからだ。夫妻は否定を続けたが、聞き入れられず、児相は「虐待の可能性がある」と一時保護の延長を求めて審判を申し立てた。

 しかし、宇都宮家裁は昨年7月、夫妻側が用意した「先天性の疾患の可能性がある」との医師の意見を重視し、「虐待を疑う証拠がない」と児相の請求を却下。東京高裁も10月、同様の判断を示した上で、「負傷原因について十分に調査した形跡がない」と指摘した。

 浩輔ちゃんは1審決定直前に半年ぶりに戻ってきた。斉田さんは一時保護で守られる命があると理解してはいるものの、気持ちが整理できずにもいる。

 「引き離すのなら、しっかり調査をしてほしかった。いったい何のための一時保護だったのか」

 県の児相は、読売新聞の取材に「個別の案件について答えられない」とした。

 ◇

 一時保護の最大の目的は、子どもの命を守ることだ。自治体が設置する児相に権限が与えられている。

 全国の児相が対応した虐待は19年度、過去最多の19万3780件。一時保護も公表されている最新の18年度で2万4864件と5年前の1・6倍に急増した。

 子どもの安全を守るため、国は躊躇ちゅうちょなく保護するよう現場に求めている。そんな中、ほころびも出ている。

 兵庫県明石市では生後2か月の男児が虐待の疑いで1年以上保護されたが、審判で虐待が否定され、昨年9月、市が両親に謝罪した。

2歳になった長女を抱いて散歩する根津彩加さん。「一時保護中はずっと不安だった」と話す(1月30日、大阪府内で)=長沖真未撮影 
2歳になった長女を抱いて散歩する根津彩加さん。「一時保護中はずっと不安だった」と話す(1月30日、大阪府内で)=長沖真未撮影 

 大阪府内に住む根津彩加さん(30歳代)(仮名)も18年、府の児相に生後1か月の長女を一時保護された。

 根津さんは「抱っこしていて落としてしまった」と説明したが、児相は虐待を疑い、一時保護の延長を求めて審判を申し立てた。

 大阪家裁は19年3月、「母親に虐待傾向は一切認められず、説明も一貫し、虐待を疑わせるものではない」と言及。家裁は長女の家庭復帰を児相に求め、準備のための延長を認めた。しかし、8月まで解除されなかった。

 根津さんは、けがをさせたことの責任を感じつつ、「どうすれば虐待ではないと証明できるのか」と児相への不信感を募らす。

 ◇ 見極め困難 児相に重圧

 一方で、一時保護が見送られ、痛ましい事件が起きるケースが後を絶たない。

 昨年7月、広島市西区のマンションで、倉重結兜ゆいとちゃん(当時2歳)が頭を強く打ち、亡くなった。床に投げ落としたとして殺人罪で起訴された父親の貴英被告(36)は「泣きやまないので腹が立った」と供述。市の児相は事件前、結兜ちゃんの体にあざを確認していたが、保護を見送っていた。

 「父親に改善が見込まれた」との判断だったという。その是非について、弁護士らで構成する市の審議会が検証している。

 なぜ守られるべき子どもが保護されず、虐待されていない子どもが家族から長く引き離されるのか。

 家庭内で起きる虐待の有無を見極めることは難しく、幼い子どもは自身で説明できない。我が子を手放すまいと感情的になりがちな保護者から粘り強く事情を聞きとることは、極めて重圧のかかる作業であることは想像に難くない。

 関西のある児相職員は取材に胸の内を明かす。「対応に追われ、常にギリギリの判断を迫られる。このままでは子どもを守れない」

 ◇ 一時保護期間 長期化の傾向

 一時保護の期間は、長期化傾向にある。

 保護された子どもが身を寄せる一時保護所の平均入所期間は2018年度は29・4日で、15年前より9日延びた。一時保護が、2年以上に及ぶケースもある。

 保護者の同意がなく、児相が施設などへの入所を求めて家裁に申し立てた審判は19年は434件と10年前の2倍。うち23件は、児相側の請求が却下された。

 一方、児相が関わりながら命を救えなかったケースも多い。18年度に虐待で死亡した64件のうち、16件は児相が生前に関わっていた。

 ◇ 一時保護 

 児童福祉法に基づき、虐待などの疑いがある18歳未満の子どもの安全を確保し、家庭環境を調査する目的で保護者から引き離す処分。原則2か月だが、家裁の承認を得て延長することもできる。

 ◇

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1813705 0 一時保護を考える 2021/02/02 05:00:00 2021/02/02 05:00:00 公園を散歩する親子(30日、大阪市内で)=長沖真未撮影 ※ネット掲載不可※ https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210202-OYTAI50001-T.jpg?type=thumbnail

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