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<2>子の人生を左右 重い判断

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深夜まで仕事が続く西日本の児童相談所。保護者から感情をぶつけられることも多い(昨年12月)=前田尚紀撮影、画像を一部修整しています
深夜まで仕事が続く西日本の児童相談所。保護者から感情をぶつけられることも多い(昨年12月)=前田尚紀撮影、画像を一部修整しています

 昨春、西日本の児童相談所に勤務する児童福祉司の石山早希さん(29)(仮名)は、出勤早々にかかってきた電話に、胸がざわついた。

 2か月前に一時保護した早田薫ちゃん(4)(同)が通う保育所からだった。「顔に青あざがあります」。嫌な予感は的中した。

 薫ちゃんは20歳代の母親ときょうだいとの3人暮らし。母親は職を転々とし、育児に不安を抱えていた。2か月前、保育所の職員がやけどを見つけ、児相が一時保護したが、母親は「アイロンが当たった」と虐待を否定。意見を聞いた医師も「事故で起きうる」としたため、20日後に家庭に戻していた。

 短期間で2度目のけが。児相は緊急保護したが、母親はこの時も「動き回る子であちこちにぶつかる」と説明した。実際、薫ちゃんにはそうした特性がみられ、医師も故意と断定できなかった。

 面会の際に薫ちゃんが母親に駆け寄ったことや、母親が児相の指導を受け入れると約束したことなどから、保護を解除した。今も見守りを続けるが、石山さんは不安を拭えずにいる。

 「子どものためにも、できるなら家庭に戻したい。でも、家庭に戻すことにはリスクもある。判断が正しかったかどうかは、時間がたたないとわからない」

 ◇ 

 子どもを家庭から引き離す一時保護は児相に与えられた権限だ。

 2018年に東京都目黒区で船戸結愛ゆあちゃん(当時5歳)が虐待死した事件を受け、国は子どもの安全を確保するため、躊躇ちゅうちょなく保護するよう現場に求めた。複数の児相関係者は「『迷ったら保護』が徹底されている」と口をそろえる。

 一方、児童福祉法は、「家庭での養育」を理念として掲げる。長期の保護は親子の愛着形成に悪影響を与える恐れがあり、児相は家庭復帰による虐待再発のリスクと比べ、どちらが最善か判断しなくてはならない。

 だが、その判断は難しい。

 島根県安来市で19年12月、母親(当時44歳)が長男(同10歳)と無理心中した事件があった。母親は長男の前で「死にたい」と漏らし、県の児相が心理的虐待の疑いで9月に長男を一時保護したが、母親と長男が帰宅を望んだことから、11月末に解除。事件はその1週間後に起きた。

 今年1月に公表された外部有識者による検証報告書は、解除の判断は妥当とした上で、その時期や家庭の支援方法に疑問を呈し、こう指摘した。

 「児相の対応件数が多く、一つ一つに深く関わることは極めて厳しい状況にある」

 ◇ 職員育成追いつかず

 

関西の児相に勤務する児童福祉司の黒田信史さん(35)(仮名)の帰宅はいつも深夜だ。毎日のように緊急事案が飛び込み、未明に呼び出されることもある。

 一時保護すると、保護者からは「子どもを返せ」「拉致や」と感情をぶつけられる。服を破られた同僚もいる。いったん保護者と対立すると、信頼関係を築くことは難しく、虐待の有無がはっきり確認できなくても、リスクを排除できない限り、家庭に戻さないこともある。

 国の方針を受け、職員は増員されているものの、業務量に追いついていない。求められる高い専門性に対し、経験不足の職員が多く、職員の育成にまで手が回らないのが現状だ。他の児相では精神疾患に追い込まれる職員もいると聞く。

 黒田さんは「一時保護は子どもを家庭から引き離すだけでなく、地域からも分断する子どもの人生を左右する重い決定だ。躊躇はしないが、葛藤はある」とした上で、こう訴える。

 「職員は精神的にも肉体的にも追い詰められている。増員だけではなく、職員を支援し、育成する仕組みが必要だ」

 ◇ 勤務3年未満 過半数占める

 児童福祉司は、児童相談所で虐待対応にあたる専門職で、医師や社会福祉士の有資格者か、大学で心理学などを学び、児童福祉の現場で実務経験を持つ職員などを自治体が任用する。所長にも同様の要件がある。いずれも自治体職員で他部署への異動もある。

 国は2018年、17年度に約3200人だった児童福祉司を22年度までに約5200人に増やす目標を設定。昨年4月に約4200人に達した。しかし、厚生労働省の昨年の調査では、「勤務年数3年未満」が51%を占め、このうち「1年未満」は23%に上った。

 国の指針では、一時保護するかどうかは、担当児童福祉司の他、所長らが参加する「受理会議」で判断する。一時保護の解除や施設入所などの措置も同様の「援助方針会議」で決める。

 ◇ 

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1816221 0 一時保護を考える 2021/02/03 05:00:00 2021/02/03 05:00:00 (※顔出しNGのため掲載要注意)連載用。児童相談所の職員は一時保護の判断の難しさに頭を悩ませている(24日、神戸市中央区で)=前田尚紀撮影2020年12月24日撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210202-OYTAI50015-T.jpg?type=thumbnail

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