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<3>虐待逃れた先 規則の束縛…私語禁止、通学もできず

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高校生の時に一時保護所に入所した寺原綾乃さん。「不安を解消してくれる場所ではなかった」と振り返る(昨年12月、東京都内で)=奥西義和撮影
高校生の時に一時保護所に入所した寺原綾乃さん。「不安を解消してくれる場所ではなかった」と振り返る(昨年12月、東京都内で)=奥西義和撮影

 深夜、児童相談所の職員に連れて来られたその部屋には、足の踏み場がないほど布団が敷き詰められ、5~6人の少女が寝息を立てていた。布団に入ると、「死にたい」とつぶやく幼い声が何度も聞こえた。

 寺原綾乃さん(26)(仮名)は高校1年だった2009年、東京都の一時保護所に入所した時のことを今も鮮明に覚えている。

 寺原さんは幼い頃から父親に虐待を受けてきた。母親は助けてくれず、脚にあざができる暴力を受け、都の児相に一時保護された。

 「やっと逃れられる」。そう思ったが、行き先は想像とかけ離れた場所だった。

 壁には「私語禁止」と貼り紙があり、子どもたちは声を潜めて話していた。高校は欠席扱いになると言われ、入所時にサインした書類には「脱走したら警察に通報する」と書かれていた。

 不安になり、夜に職員室に行くと、部屋を出たことをしかられた。「親とうまくいかない私への罰なのかな」。自分を責めた。

 耐えられず、「家に帰りたい」と訴えるとあっさり保護は解除された。父親の暴力は止まったが、プライドが傷つけられたのか、陰湿な嫌がらせをされるようになり、3年前、家を出た。

 「子どもを守るための一時保護なのに、どうしてつらい思いをしなくてはいけないのか」。寺原さんは今も疑問を持ち続けている。

 ◇ 

 虐待を受けた子どもらが身を寄せる一時保護所の環境改善が課題だ。

 児童福祉法が成立し、児相の設置が義務づけられたのは戦後間もない1947年。当時の一時保護所の主な目的は戦災孤児の受け皿で、80年代にかけて非行や不登校などの子どもも受け入れるようになった。

 90年代以降は虐待対応が増加。都市部を中心に一時保護所の定員超過が慢性化し、少ない職員で大勢を管理するため、規則が設けられるようになったという。

 児童指導員の西隅寛之さん(27)(仮名)が勤務する関東の一時保護所では、入所児童が定員の2倍を超えることは珍しくなく、1人で8人の子どもを担当している。「食事を完食するまで席を立たない」「髪は黒く染める」などの規則があり、保護者に連れ去られる恐れがあるなどの理由で、通学も許されず、外出も自由にできない。

 所内には虐待だけでなく、非行などの理由で保護された子どもが混在し、幼児から高校生まで年齢も様々で、障害を抱えるなど不安定な子どもも多い。規則がないともめ事や事故を防げない。上司から「子どもになめられるので優しくしないように」と言われている。

 虐待する親から逃れ、徐々に表情が和らいでいく子どももいる。大切な場所だと考えているが、疑問を感じ、1か月もたたずにやめていく同僚もいる。西隅さんは「私たちも追い詰められている」と訴える。

 ◇ 

 児相は一時保護した子どもを外部の児童養護施設や里親に委託できる。大阪府羽曳野市の児童養護施設「高鷲学園」は18年から、保護された子ども専用の施設を運営している。

 定員6人の専用施設には1人ずつ個室を用意し、リビングや台所など家にいるような環境だ。保護された子どもを連れて映画を見に行ったり、バーベキューをしたりすることもある。

 岡出多申かづのぶ副施設長(46)は「預かるだけではなく、子どもたちが大切な時間を過ごし、次へのステップに進む支えになりたい」と話す。

 だが、こうした施設は一部だ。同様に家庭的な環境で過ごせる里親にも委託できるが、短期の一時保護児童は受け入れを断られるケースもあり、進んでいない。

 各自治体は、環境改善のため、非行少年などと生活スペースを分けたり、個室を備えたり、一時保護所の増設や改修を進めている。しかし、財源の問題に加え、住民の反発が起きることもある。

 大阪市では5年前、一時保護所を併設した児相を同市北区のマンションに新設しようとしたが、「地域の平穏が乱される」という住民の反対で場所を変更。東京都港区の南青山でも18年、児相の建設計画に住民から異論が上がった。

 虐待で傷ついた子どもたちを社会でどう支えるか、問われている。

 ◇ 2割の施設 定員を超過

 一時保護所の大半は児童相談所に併設され、虐待以外の理由で保護された子どもも一緒に生活する。2018年度の入所件数計2万5764件のうち、最多は虐待の1万4468件(56%)。次いで「保護者の入院や失踪、死亡など」が5856件(22%)、非行が3283件(12%)だった。

 昨年4月現在、全国に143施設(定員計3222人)あり、10年前から19施設、定員で535人増えた。だが、厚生労働省の19年の調査では、全体の約2割の施設が年間平均入所率が100%を超え、居室が足りず、医務室などを使うケースもあるという。

 ◇ 

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