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<4>親子面会 苦渋の制限

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 昨夏、関西の児童相談所の面談室。一時保護されていた小学2年の和田結斗君(8)(仮名)が職員に付き添われて部屋に入ると、待っていた母親(20歳代)が突然大声を上げた。

 「あんたのせいでこんなことになったんや!」

 結斗君はおびえ、職員は慌てて母親を制止。数週間ぶりだった母子の対面は、わずか数分で中断された。

 母親は「しつけ」と称して、結斗君の顔をたたくなどの暴力を繰り返していた。児相との面談で虐待を認めて反省の態度を示し、結斗君も「帰りたい」と訴えていたため、児相は面会が可能と判断したが、母親は息子の顔を見た途端に豹変ひょうへんした。

 児相幹部は「子どもは虐待されていても、親に会いたがる。でも、子どもに悪影響を与える恐れは常にある」と苦悩を漏らす。

 ◇ 関係修復とリスク 板挟み

 

一時保護中の面会について、厚生労働省は、安全が確保できると判断すれば、制限は「最小限」にするよう指針で示している。日本が批准する「子どもの権利条約」も、離ればなれになった親子が定期的に接触する権利を保障している。

 一時保護には、虐待で傷ついた子どもを落ち着かせる目的がある。保護された7割超が家庭に戻っており、面会は親子関係の見極めや修復のためにも重要だ。

 しかし、実際は制限されることが多い。

 中には面会を通じて支配を継続しようとする保護者もおり、子どもの証言は左右され、児相の調査に支障が出る恐れもあるためだ。

 リスクを重視するあまり、過度に制限され、児相と保護者との対立を生む可能性もある。

 東京都の僧侶・伊西亮平さん(41)(仮名)は2017年10月、1歳だった長男を一時保護され、5か月間会えなかった。長男が自宅で頭に重傷を負い、児相に「転倒した」と説明したが、「虐待の可能性がある」と入院中にそのまま長男を連れて行かれたという。

 面会は許されず、居場所も教えてもらえなかった。児相側に「指導を受け入れれば、帰宅を検討する」と言われ、覚えがない虐待を認めると、面会が許された。

 長男はその後、自宅に戻ったが、伊西さんは「虐待を認めないと、会わせてくれなかった。乳児だった長男と会うことで、どんな悪影響があったのか」と今も納得できずにいる。

 ◇

 児相には、面会の実施が容易ではない事情もある。

 厚労省は、安全確保のために職員の立ち会いを求めている。一方、児相は同省の指針で、通告や相談があると48時間以内に子どもの安全を確認することも求められている。緊急対応に追われ、立ち会う職員を確保できない児相もある。

 政令市の児相担当者は「保護者や子どもの意向を十分に反映できていない側面もある」と打ち明ける。

 そうした中、兵庫県明石市は昨秋、虐待を疑われた乳児が1年以上両親から隔離された問題を受け、「面会原則容認」との方針を打ち出した。

 個々の事情に応じて可否を判断することは変わらない。実際に今も制限しているケースがあるが、「制限は例外」との考え方を徹底し、立ち会いのための専従職員も置いた。

かつて子どもと訪れた海岸で、「また一緒に遊びたい」と話す中島かすみさん(2日、兵庫県明石市で)=宇那木健一撮影
かつて子どもと訪れた海岸で、「また一緒に遊びたい」と話す中島かすみさん(2日、兵庫県明石市で)=宇那木健一撮影

 昨年11月、市の児相にネグレクト(育児放棄)などの疑いで3人の子どもを一時保護されていたシングルマザーの中島かすみさん(32)(仮名)が、9か月ぶりに長男(6)との面会を許された。

 長男は中島さんの顔を見ると泣き出した。「ごめんね」。抱きしめて謝った。

 会えたことで心境に変化が生まれた。「子どもに甘えていたことに気づいた」と、児相の指導を受け入れ、自分と向き合っている。

 3人は今、児童養護施設で生活し、一緒に暮らせる見通しはない。でも、月1回会える日が励みになっている。

 ◇ 英国など 裁判所判断

 児童虐待防止法は、一時保護中の子どもと保護者の面会を「行政処分」として制限できると定めている。

 しかし、適用できるのは、虐待が確認された場合だけで、「疑い」ではできない。同法に基づく面会や通信の制限は2018年度57件にとどまり、制限の多くが「指導」として行われているとみられる。行政処分では不服申し立てなどの手続きがあるが、指導にはない。

 資生堂社会福祉事業財団によると、英国では、面会の可否は裁判所が判断する。カナダの一部の州でも、保護者の申し立てを受けて、裁判所が決定する仕組みになっている。

 ◇ 

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