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保護者との関係悪化恐れ、養護施設費の徴収に慎重…児相の業務さらに圧迫

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 虐待などの理由で施設で暮らす子どもの生活費などの徴収に、児童相談所が頭を悩ませている実態が明らかになった。子どもと引き離されて感情的になる保護者は少なくなく、未徴収は請求額の5割。虐待の増加でただでさえ負担が増している児童相談所の業務を圧迫しており、現場からは改善を求める声が上がる。(増田尚浩、虎走亮介)

■ 態度一変 

 「勝手に連れていったのに、なぜ金を払わないといけないのか」。中部地方の児相の職員は5年前、一時保護した子どもの保護者に激しく詰め寄られた。

 子どもは身体的な虐待を受けた疑いがあり、児相は児童養護施設への入所を決め、当初は保護者も同意していた。しかし、施設でかかる費用(措置費用)の説明をすると、同意を翻し、態度を豹変ひょうへんさせたという。

 児童福祉法は、虐待を受けた子どもを施設などに入所させる場合、保護者の同意を得るよう求めている。同意がない場合は裁判所の承認が必要で、このケースでも児相が審判を申し立てたため、一時保護が延長され、約8か月に及んだ。職員は「不安定な状態が長引く結果になった」とため息をつく。

 今回の調査では、多くの自治体が措置費用は同意を得る障害になっていると回答した。中国地方の担当者は「お金がかかると知ったとたん、連絡が取れなくなる保護者もいる」と明かす。

 請求額は児童福祉法に基づいて国が要綱で定め、保護者の所得や預け先の種類や規模などによって異なるが、「所得の把握が困難で、請求できない」「金額設定がわかりにくく、理解が得づらい」との回答もあった。

 関西の児相の職員は「ただでさえ保護者の対応は難しく、多くの職員が精神的に追い込まれている。とてもじゃないが、お金の話を切り出せない」と漏らす。

■ 増える入所 

 厚生労働省によると、虐待の疑いで子どもが一時保護された件数は2019年度過去最多の3万264件で、5年前からほぼ倍増した。それに伴い、施設入所や里親委託も増えており、19年度は5029件と10年前から998件増加した。

 一方、児童福祉法は「家庭での養育」を原則とする理念を明記し、児相は子どもの家庭復帰に向けて保護者を指導する必要がある。

 自治体は、住民税などの滞納者には預貯金を差し押さえるなどの対応を取るが、保護者との関係が悪化すると、子どもの家庭復帰が困難になるため、慎重に対応する自治体が多かった。

 15自治体が、同意が得られない場合は請求しない運用をしており、兵庫県の担当者は「費用を請求すれば、『それなら返してほしい』と子どもを施設から連れ去るリスクが増える」と話す。

 浜松市は差し押さえまではしていない。担当者は「保護者が頑なになり、子どもが家庭復帰できなくなる事態は避けないといけない」と説明する。

■ 不公平 

 5割が未徴収という実態に、3年半前に長男が一時保護された大阪府内の男性(47)は「公平じゃない」と疑問を呈する。

 男性の長男は自宅で頭にけがを負い、虐待を疑われた。男性は「事故だった」と主張したが、保護後は長男の居場所も教えてもらえず、制限されていた面会を許してもらうために施設入所に同意し、月3万~4万円の費用を1年以上支払ったという。「保護者によって徴収しないことがあるなんて知らなかった」と話す。

保護者に郵送される措置費用の納入通知書(画像は一部修整しています)
保護者に郵送される措置費用の納入通知書(画像は一部修整しています)

 九州の自治体の担当者も「役所全体で税金などの滞納者への対応を強化する中、監査の担当部署から厳しい指摘を受ける」と明かす。

 愛知県は昨年、厚労省に費用の減免制度を設けるよう要請したという。

 各地で児相と保護者の対立は深刻化しており、厚労省の有識者会議は4月、一時保護の判断に家裁の関与を強め、透明性を高める新制度を提言。措置費用の負担のあり方についても議論の対象になり、児相現場が保護者の反発に苦慮している実態が報告された。

 会議では、委員の間で「徴収することで子どもの養育に悪影響があってはいけない」「扶養義務がある保護者が支払うべきだ」と意見が分かれて結論が出ず、措置費用の負担のあり方は今後の検討課題となった。

 ◇ 日本社会事業大の有村大士・准教授(子ども家庭福祉)の話

 「5割が未徴収という実態は制度の矛盾を表している。徴収業務が児相の大きな負担となっており、徴収業務を児相から切り離すことも検討するべきだ。その上で、社会で子どもを養育する際の費用を誰がどう負担するか、他の行政サービスとの公平性など多面的な視点で、社会的に議論を深める必要がある」

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2027127 0 一時保護を考える 2021/05/03 05:00:00 2021/05/03 05:00:00 複写(2日午後6時40分、大阪市阿倍野区で)=枡田直也撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210502-OYTAI50018-T.jpg?type=thumbnail

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