虐待リスク説明ないままに・・・生後数日で乳児引き離し 児相「命を守るためなら」

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 虐待を受けていないのに、生後間もない乳児が児童相談所に一時保護されるケースがある。健康上や経済的な理由などで保護者の養育に不安があると判断された子どもらだが、十分な説明がないまま長く引き離され、児相に不信感を抱く保護者もいる。一方、乳児が犠牲になる虐待事件は後を絶たず、児相側の危機感は強い。養育に不安を抱える家庭の支援はどうあるべきなのか。(虎走亮介、杉山弥生子)

長女のベビー服を見つめる大島響子さん。一度も着せられないまま、サイズが合わなくなった(4月)=前田尚紀撮影
長女のベビー服を見つめる大島響子さん。一度も着せられないまま、サイズが合わなくなった(4月)=前田尚紀撮影

新品のベビー服

 関西に住む大島響子さん(36)(仮名)は昨年3月、出産した6日後に長女が児相に一時保護された。

 大島さんは過去に夫に暴力を振るわれたことがある。夫はうつ病と診断され、仕事をやめて収入面でも不安があり、出産前から自治体に相談していた。保護は虐待リスクがあると児相に判断されたためとみられるが、夫の症状が安定し、2人で協力して子育てしようと話し合っていたという。

 大島さんは同意していなかったが、保護が続き、長女と初めて面会できたのは3か月後。授乳しようとしたが、飲んでくれなかった。児相は家庭裁判所に申し立て、長女の乳児院への入所が決まった。児相の指導で夫と虐待防止プログラムも受講し、別の母親が「たたいてしまった」と話すのを聞き、「私は何もしていないのに」との思いが募る。出産前に買ったベビー服は新品のままだ。

 大島さんは子どもを守るために一時保護は必要な制度だと考える。しかし、「どうすれば一緒に暮らせるのか児相から説明がない。してもいない虐待をすると思われるのはつらい」と途方に暮れる。

切れ目ない支援

 一時保護は、虐待された疑いがある子どもを児相が原則2か月以内で家庭から引き離す児童福祉法に基づく措置だ。一方、同法は、養育に困難を抱える妊婦を「特定妊婦」と定め、自治体に出産前から切れ目ない支援を求めている。児相が子どもの安全のために必要と判断すれば、出産直後に一時保護することもある。

 特定妊婦かどうかは本人に告げられないが、自治体や児相などでつくる要保護児童対策地域協議会で情報共有される。全国に7233人(2018年)が登録され、相談に応じ、育児や家事を支援したり、専門機関につなげたりしている。

 中国地方の北本美里さん(29)(仮名)も昨年12月、生後4日の長男を一時保護された。北本さんは、うつ病と発達障害と診断されている。出産1か月前、面談した保健師に「子どもが泣いたらたたいてしまうかも」と漏らしたことが理由と考えているが、出産に備えて夫の実家の支援を受けられる準備をしていたという。長男は1か月後に戻ったが、母子が2人きりにならないよう条件を付けられた。北本さんは「保護が怖くて、子育てで悩んでも児相に相談できない」と漏らした。

「反発されても」

 厚生労働省によると、0歳児の一時保護件数の統計はないが、0~5歳は19年度1万5315件で、前年度より1619件増えた。 児相が神経質になるのは、出産後は虐待リスクが高まるとされているからだ。厚生労働省によると、18年度に虐待死した子どもは54人で、うち22人が0歳だった。

 昨年、大阪市平野区の市営住宅で、子ども4人を持つ母親が生後7か月の三女を転落させ殺害し、殺人罪で起訴された。判決によると、母親は家族や行政の支援を受けられず精神的に追い詰められていたという。

 関西の児相幹部は「親が抱える様々な事情を考慮して保護するかどうか判断する。産後すぐに保護するケースの多くは望まない妊娠や経済的困窮などだ」と説明。その上で「子どもの命を守るためなら親に反発されても 躊躇ちゅうちょ しない」と語る。

 厚労省の有識者会議は4月、各地で児相と保護者が対立するケースが多いとして、一時保護する際に家庭裁判所が妥当性を審査する制度の導入を提言。その中で「保護者に一時保護の理由や見通しを丁寧に説明し、納得が得られるよう努めるべきだ」と指摘した。

保護者に丁寧な対応を・・・宮島清・日本社会事業大教授(子ども家庭福祉)

 産後すぐでも子どもの安全のために保護が必要な場合はある。しかし、乳児期に長期間離れると親子の愛着が育まれにくく、親子関係の構築が難しくなる。出来る限り分離を避け、必要な場合は保護者に丁寧に説明するべきだ。医療機関や行政の福祉部門などが協力し、地域でショートステイや訪問型の支援を受けられる体制整備が必要だ

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