予約ゼロもがく宿泊業 ゆらぐ暮らし【4】

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

廃業激増雇用にも打撃

 高級織物・西陣織の工場が立ち並ぶ京都市上京区の西陣地区。織物工場だった築100年の町家を改装したゲストハウス(簡易宿泊所)を経営していた河野鉄平さん(63)は今月廃業し、妻と娘が住む長野県に戻った。

かつては訪日外国人客でにぎわった清水寺周辺。年明けからの第6波で、閑散としている(20日、京都市東山区で)=河村道浩撮影
かつては訪日外国人客でにぎわった清水寺周辺。年明けからの第6波で、閑散としている(20日、京都市東山区で)=河村道浩撮影

 建材メーカーの営業を経て、30歳過ぎから長野県でペンションを経営。生まれ故郷の京都市で宿泊施設を開くことが夢だった。2017年に長野県のペンションを閉じ、ゲストハウスの開業資金として約4500万円を投じた。和風の趣が訪日外国人客に人気を呼び、経営は順調だった。

 しかし、20年2月頃から新規予約はほぼゼロになり、半年前から休業。収束を期待して京都市の臨時職員として働いてきたが、訪日観光の先行きは見えず、撤退を決めた。

 ゲストハウスは住宅として借り手がついたが、改装した際の借金は1000万円以上残る。河野さんは「長野で仕事が見つかるかどうか。コロナに負けた。無念だ」と唇をかむ。

 政府は16年、30年に訪日客年6000万人の目標を掲げ、19年に過去最高の3188万人に達した。

 しかし、20年の訪日客は411万人と前年の約1割に激減。20年末以降、政府は全世界からの新規入国を原則停止とする厳しい措置を取り、21年は24万人と統計開始以来最低となった。

 京都市内では20年3月末以降、800軒以上の簡易宿泊所が廃業に追い込まれた。帝国データバンクによると、コロナ関連のホテル・旅館の倒産は全国で123件あり、同社は「自主廃業や休業を含めるとかなり大きな数になる」とみる。

 雇用にも深刻な影響を及ぼし、総務省の労働力調査によると、宿泊業の雇用者数は19年平均で59万人だったが、20年平均は52万人と7万人減少。このうち非正規雇用は33万人から28万人と5万人減少し、正規雇用より減り幅が大きかった。

 全国で49か所のホテルを展開する「プリンスホテル」(東京)は、21年9月までに全国で非正規社員全体の約2割にあたる883人の契約を更新しなかった。正社員の早期退職募集は実施していない。

 同社は「事業維持のため非正規社員の一部の労働契約を終了せざるを得なかった。対象者には一時金を支払うなど誠心誠意対応させていただいた」とする。しかし、大津市の「びわ湖大津プリンスホテル」で、30年以上続けていた宴会場などの配膳係の仕事を失った敏子さん(50歳代)(仮名)は「ホテルの仕事が好きで、ずっと続けたかったのに……」とやりきれない思いでいる。

 観光は交通や飲食、土産物店など裾野が広い。

 松山市の道後温泉本館前に土産物店や飲食店など約60店が軒を連ねる道後商店街ではコロナ禍以降、シャッターを下ろした店が目立つようになった。

 土産物店「 かすり 屋」の3代目石田 匡暁まさとし さん(45)は20年4月の最初の緊急事態宣言後、売り上げが9割落ち込んだ。従業員25人は長年苦楽をともにしたベテランばかり。雇用を守るため、3年間実質無利子となる日本政策金融公庫の制度を使って約6000万円を借り入れた。しかし、年始からの感染第6波で周辺の旅館には予約のキャンセルが相次いでいる。

 石田さんは「光が見えたと思えば消えるの繰り返し。どこまであがけるか……」と遠くを見つめた。(杉山正樹、喜多河孝康)

訪日客頼みリスク

 政府は20年7月、観光支援事業「Go To トラベル」を開始した。旅行代金の35%(上限1万4000円)を補助し、飲食店などで使える地域共通クーポン(旅行代金の15%)を配布する制度で、同年5月に延べ892万人まで減っていた国内の宿泊者数(外国人含む)は同年11月に延べ3715万人に回復した。

 しかし、感染再拡大で12月に事業停止。補助額の上限額が高いため、高級ホテルに客が集中し、中小の旅館などに恩恵が薄いとの批判も現場から上がった。国は21年11月、割引上限を1万円に引き下げ、今月下旬にも再開する方針だったが、オミクロン株の拡大でめどは立っていない。

 高崎経済大の井門隆夫教授(観光経営)は「コロナ禍で訪日外国人客に頼りすぎるリスクが顕著になった。国内旅行の活性化が必要だが、人口減少で国内需要も今後しぼむ。観光事業者は、体験型や長期滞在型の旅行を提案するなど客単価を上げる努力が必要だ。行政もばらまきではなく、効果的な補助金により、業界の変革を促してほしい」とする。

メール  osaka2@yomiuri.com

LINE  https://lin.ee/FROjZBRd

(4)
(4)
スクラップは会員限定です

使い方
「地域」の最新記事一覧
2698046 0 ゆらぐ暮らし 2022/01/24 05:00:00 2022/01/24 05:00:00 観光客がまばらな清水寺周辺(20日午後2時24分、京都市東山区で)=河村道浩撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/01/20220123-OYTAI50037-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)