[言わせて 聞かせて]「正しく恐れてもらう」報道模索

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 夜が更けて、読売新聞大阪本社編集局にある「社会部」は、慌ただしい雰囲気に包まれています。

 朝刊の締め切り時間が迫り、勢いよくパソコンのキーをたたく音、原稿の最終確認に追われる声が響いています。

 日々の事件や事故、裁判や行政の動き……。社会部記者が追うテーマは実に様々です。この新コーナーは毎週日曜、そんな記者たちが取材体験や、記事の裏側にある思いを発信したり、みなさんの意見を紹介したりして作っていきたいと思います。

読売新聞大阪本社編集局内にある社会部
読売新聞大阪本社編集局内にある社会部

 今年もあと3か月足らず。社会部もコロナに始まり、コロナに終わる1年になりそうです。初回は、記者の原稿を手直しする「デスク」という役目にある私から。コロナ報道で考えたことです。

 クラスター(感染集団)が出た場合、自治体の公表に基づいて施設名などを記事にすることがあります。他への感染拡大を防ぐために必要な情報ですが、当事者への誹謗ひぼう中傷や差別を招く恐れがあるという難しさがあります。

 実際に大きな影響が出たのが、松江市の高校で8月、サッカー部員を中心に起きた集団感染でした。

 部員が寮で共同生活していたこともあり、本紙も含め新聞やテレビが大きく取り上げましたが、学校には「日本から出ていけ」などと心ない電話が殺到しました。

 生徒も標的となり、ネット上では部員らの写真が拡散。「コロナをばらまいている」などと書き込まれました。

 誰でも感染する可能性はあります。私たちが記事にするのは、感染が広がるリスクをいち早く社会に知らせ、対策を取ってもらうためです。当事者が責められることがあってはなりません。

 生徒の精神的ショックも懸念されました。私にも部活をやっている息子がおり、なおさら心配になりました。

 約2週間後、生徒らへの批判をやめるよう呼びかける記事を出しました。サッカーの本田圭佑選手が生徒に向けた「謝罪する必要なんてないよ」というメッセージも掲載すると、学校には多くの激励が寄せられました。やがて批判も収まりましたが、痛感したのは「正しく恐れてもらう」の難しさでした。

 過剰な反応の背景には、コロナ禍での人々の不安や不満があります。仮に事実を伝えなければ、デマが広がり、無関係の人が被害に遭うこともあるでしょう。結局のところ、「感染は罪ではない」と繰り返し訴えていくしかないのかもしれません。

 怒りや嫌悪を向けるのではなく、いたわりを。簡単ではありませんが、そんな行動につながる情報発信を、模索し続けています。

 ◇

 次回からは、最前線で取材する記者たちが、現場で見えたこと、肌で感じたことなどをつづります。ぜひ、あなたからの「言わせて」「聞かせて」も寄せてください。お便りでもメール、LINEラインでも。お待ちしています。

 

【今回の担当は】中沢直紀(なかざわ・なおき) 外国人技能実習生や留学生の受け入れを巡る問題などをデスクとして担当した。45歳。京都府出身。

〒530・8551(住所不要)読売新聞大阪本社社会部「言わせて」係

●メール iwasete@yomiuri.com

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1538609 0 言わせて 聞かせて 2020/10/11 05:00:00 2020/10/11 05:00:00 2020/10/11 05:00:00 多くの記者でにぎわう社会部(10日、読売新聞大阪本社で)=東直哉撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201010-OYTAI50066-T.jpg?type=thumbnail

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