入国制限 愛は観光ではない
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コロナ禍の収束が見通せないまま、クリスマスが近づいてきました。大阪では飲食店の時短営業が続いていますが、イルミネーションを楽しむ恋人たちの姿もちらほら見かけます。
そんな風景を見て、さみしさを募らせる人がいます。コロナで国境を越えた移動が制限され、離ればなれになったままの国際遠距離恋愛のカップルたちです。
当欄では、みなさんの疑問や困り事も募集しています。愛知県豊田市の会社員広瀬彩乃さん(20)から「国際カップルの現状を知ってほしい」とメッセージが届き、話を聞きに行きました。
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「そっちは寒くない?」「もうご飯食べた?」
広瀬さんは約5600キロ離れたインドネシア・スマトラ島に住む恋人のデリさん(26)とスマートフォンの画面越しに話した後、いつもさみしさに襲われます。
出会いは昨年夏。デリさんが技能実習生として働いていた自動車部品メーカーに広瀬さんが就職したことがきっかけでした。互いに好意を抱き、結婚を約束しましたが、今年4月にデリさんが帰国した直後、渡航が制限されました。
理由はもちろんコロナです。感染拡大防止のため、各国は外国人の入国を制限し、日本も152か国・地域からの入国を拒否しています。「特段の事情がある場合」として、配偶者や子どもは入国でき、ビジネス目的も徐々に緩和されていますが、観光目的で入国せざるをえない国際カップルは置き去りのままです。
広瀬さんがデリさんと会えなくなって7か月余り。デリさんは、経営する飲食店で夜遅くまで働き、すれ違いもあるそうです。何よりつらいのが、先が見えないこと。広瀬さんは「早く顔を見て、彼に触れたい」と話していました。
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SNS上では、今年6月頃から「#LoveIsNotTourism(愛は観光ではない)」というハッシュタグ(検索ワード)をつけ、交際相手の入国を求める投稿が世界中で広がり、フェイスブックのグループには4万人以上が参加しています。
当事者の声を受け、デンマークやノルウェーなどでは交際相手の入国を認めるようになったそうですが、日本の出入国在留管理庁は「交際相手かどうかの証明が難しい」と消極的です。
東京都の医師石井佳奈さん(38)も、米国人の恋人と引き離された当事者でした。国際郵便で書類を取り寄せ、10月に結婚できましたが、「同じような思いをしてほしくない」と入国制限の緩和を求める署名をSNSで募り、これまでに2800人分を集めました。石井さんは「『それぐらい我慢したら』とつらさを理解されず、多くの人が孤立しています」と訴えます。
コロナ禍で誰もが我慢を強いられています。政府の対策に優先順位がつけられるのは仕方がありませんが、つらい思いは人それぞれ、順位はつけられないでしょう。
「魂の片割れ」という意味から、恋人は「ベターハーフ」とも言われます。一日も早く、世界中の恋人たちが一つに戻る日が来ることを願います。
【今回の担当は】中田智香子(なかた・ちかこ) 9月に社会部に着任。オンライン取材にも慣れてきたが、やはり直接話したい。30歳。岡山県出身。
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