記者会見 駆け引きに注目を
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新聞記者にとって、欠かせないのが記者会見です。
官公庁や企業、スポーツ選手など取材対象は多岐にわたりますが、特に注目が集まるのが政治家の発言でしょう。
有権者の負託を受けた政治家には説明責任があります。しかし、誰だって都合の悪いことは聞かれたくないもの。時には駆け引きも駆使し、本音や事実を引き出します。
コロナ禍では、都道府県知事の発言に注目が集まりました。私が担当する大阪府の吉村洋文知事は特に露出が増えた一人です。
今回は、記者会見の裏側を少しご紹介します。
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吉村知事は、マスコミ各社が加盟する府政記者会が主催する毎週水曜日の定例会見のほか、登庁時にほぼ毎日、立ったまま記者の質問を受ける「ぶら下がり」に応じます。
定例会見は平均1時間30分。2時間以上に及ぶことも珍しくありません。ぶら下がりでもゆうに30分は続きます。質問が出尽くすまで応じるからで、橋下徹元知事時代から続く「大阪流」だそうです。
また、職員が用意したペーパーをほとんど読まないのも吉村知事の特徴です。会見では批判的な質問も出ますが、質問から逃げず、自分の言葉で説明する印象があります。
私は前任の政治部で首相官邸や自民党を担当しましたが、2時間を超える会見はほとんど記憶にありません。
自分の言葉で説明しようとする吉村知事の姿勢は評価できますが、危うさもあります。
昨年8月、市販のうがい薬に唾液中の新型コロナウイルスを減らす効果があると記者会見で発表。買い占め騒動が起き、「不用意だ」と批判されたのはご存じの通りです。
後に、吉村知事は「あんなに批判されると思わなかった」と語りましたが、その後も、十分な根回しなく重要政策を突然発言することは少なくありません。対応に追われる職員からぼやきも聞かれます。
緊張感は我々も同じ。私もかつて大臣が突然辞任を表明した会見に出て、慌てたことがあります。プロとして、どんな発言が出ても適切な質問ができなければなりません。
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記者会見で、私が心がけているのは、相手を知り、自分を知ってもらうことです。
政治家にもいろんなタイプがいます。大胆な発言で自分を大きく見せる人、知識を披露したがる人、「思い」を語りたがる人もいます。聞いてほしそうなことを聞き、その後で重要な質問をぶつけることもテクニックの一つ。表情や口調の変化も見逃しません。
また、会見では同じ場所にいるようにし、必ず一度は質問します。顔と名前を覚えてもらうことで、より丁寧な答えを引き出せるからです。
最近はテレビやネットで会見が公開され、記者への視線も厳しくなっています。礼儀は欠かせませんが、私たちの仕事は国民の疑問をただすこと。絶対に
記者会見は真剣勝負の場です。中継を見る機会があれば、記者がどんな質問をするかにも注目してみてください。
【今回の担当は】太田晶久(おおた・あきひさ) 大阪府庁で、コロナ対策などを取材。政治部時代は自民党の石破茂元幹事長の番記者だった。36歳。
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