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 今日は一本の映画にまつわる話をさせてください。タイトルは「記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡」。少女にインタビューしたドキュメンタリーで、先日、上映会に足を運びました。

 制作したのは、東京の高校で事務職員として働く中村すえこさん(45)です。経験はほとんどありませんでしたが、協力者探しや寄付金集めに何年もかけて奔走し、法務省とも交渉を重ねた末、2年前に完成させました。

少年院で少女にインタビューする中村さん(左)(記憶製作基金提供)
少年院で少女にインタビューする中村さん(左)(記憶製作基金提供)

 映画では、少年院を訪れた中村さんに対し、退院を前にした4人が過酷な生い立ちを淡々と語ります。

 生後間もなく乳児院に預けられ、児童養護施設で育った少女は、覚醒剤に手を出して逮捕されました。小学生の頃からリストカットを繰り返し、「死んでも誰も悲しまないから」と言いました。

 別の少女が窃盗を繰り返したのは、薬物依存の母親が生活保護費を使い果たし、2人の食料を得るためでした。

 「そう生きなければならない様々な理由があった」。映画の最後には、そんなナレーションが流れました。

 実は中村さんも少年院に入っていました。家で父親が酒を飲んで暴れ、母親が夜の仕事で家を空ける寂しさから、中学2年で女子だけの暴走族に入り、「総長」になります。傷害事件で逮捕され、少年院を出てすぐに覚醒剤に手を出し、再び逮捕されます。

 留置場で妊娠が分かり、母親に「おなかの子を守れるのはお前だけなんだよ」と諭され、更生を誓いますが、その後も過去がつきまといます。勤務先で金がなくなると真っ先に疑われ、憤りと諦めの日々だったそうです。

 33歳の時、少年院出身者を支援するNPO活動への参加が、転機になりました。少年院の元教官に「あなたの経験が必要だ」と誘われ、全国の少年院を回って自身の体験を語ってきました。

 社会に出ても周囲の冷たい視線に直面し、再び足を踏み外す若者が多いのも現実です。映画を作ったのは、「少しでも彼らの事情を知ってほしい」との思いからでした。

 私が中村さんと知り合ったのは4年余り前です。手痛い失敗でバッシングを浴びた人たちの再起を追った連載「セカンドチャンス」の取材でした。他にも様々な人を取り上げました。殺人事件で妹を失った経験がありながらも、刑務所を出た人らを雇い入れ、応援する男性の話にも胸を打たれました。

 しかし、残念ながら、失敗した人を許さない不寛容な空気は、より強まっているように感じます。

 私も学生時代、事件を起こした少年と面談し、更生を支援する家庭裁判所調査官になろうと考えたことがあります。再起に苦しむ人の背景に目を向けず、「自己責任」の言葉を投げつける風潮にはあらがい続けたい思いです。

 たとえ「きれい事だ」と笑う人がいようとも、中村さんは「人は変われる」と訴え続けます。私は、過去と向き合い、もがく人たちのセカンドチャンスを記事で後押ししていくつもりです。

 【今回の担当は】増田弘輔(ますだ・こうすけ) 以前は裁判や行政の取材を担当。京都総局で記者の原稿を手直しする「デスク」も務めた。44歳。

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1959643 0 言わせて 聞かせて 2021/04/04 05:00:00 2021/04/04 05:00:00 2021/04/04 05:00:00 少年院で少女にインタビューする中村さん(左)(記憶製作基金提供) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210403-OYTAI50012-T.jpg?type=thumbnail

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