新在留資格取得に壁 実習生書き換えられた職歴

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 ベトナム人技能実習生の来日を巡り、職歴の偽装が広く行われていることが、両国の関係者への取材でわかった。母国での同種の職歴を必要とする来日要件を満たすため、現地の送り出し業者が続けてきたという。実習生は偽装の経緯を知らないことが多く、実習終了後、新在留資格「特定技能」の取得を申請しても、過去の偽装を理由に一部が不許可になる恐れが指摘されている。新資格での雇用を予定する企業にも影響が及びそうだ。

ベトナム業者 来日要件満たすため

 4月に導入された新資格の取得には、各業種の技能試験と日本語試験に合格する必要がある。一方、同じ業種で2年10か月以上の技能実習の経験がある外国人は無試験で取得でき、政府は当面、実習経験者が取得者の約半数を占めると想定している。

 技能実習制度では、実習生を受け入れる企業は原則、「前職要件」を満たした履歴書などを提出しなければ、入管当局から在留資格が認められない。しかし、機械や食品製造など途上国にはあまり存在しない職種も少なくない。

 ベトナムでも農業や縫製などを除き、前職要件に合致する希望者はほとんどいないとされる。ベトナム人実習生は、全体の半数に当たる約16万4000人(2018年末)に増え、国籍別で最多となったが、首都・ハノイの複数の送り出し業者は「かなりの割合で職歴を偽装している」と証言。

 ある業者は「履歴書は、日本での派遣先が決まれば、その業種に合わせた内容に書き換える。勤務先として記した現地企業の偽の在職証明書もそろえ、一緒に日本側に送っている」と具体的な手口を明かす。

 日本側で実習生を受け入れ、企業にあっせんする多数の「監理団体」も実態を認識しており、幹部の一人は「前職要件を守っていたら人手を確保できない。大半の実習生の職歴はうそだと思っているが、黙認している」という。

 一方、出入国在留管理庁によると、実習経験者が新在留資格を申請する場合は再度、母国で職歴などを記した履歴書を提出する必要がある。同庁は「どの在留資格でも、過去に提出された経歴と照合し、虚偽があれば信用できない人物と判断せざるを得ず、原則、認められない」とする。

 実習生は前職要件の存在自体を知らないことも多く、職歴を偽装された元実習生らは取材に対し「送り出し業者には正しい履歴書を出した」と説明。業者から日本側に入国時に提出された内容も分からないという。外国人の在留資格申請に詳しい行政書士らによると、こうした元実習生が、そのまま正しい職歴で新資格取得を申請すれば、不許可になるとみられる。

 実習制度に詳しい山脇康嗣弁護士(第二東京弁護士会)は「実習生の半数以上は、職歴偽装と考えていいだろう。新在留資格への移行で大きな問題になる可能性が高い」と指摘する。

制度ゆがみ国の対応必要

 職歴偽装が続いてきた背景には、実習制度が長年抱えてきたゆがみがある。

 前職要件が設けられているのは、母国で同業種の企業で勤務し、帰国後も復職が予定されている人材に日本に来てもらうほうが、途上国への技能移転に役立つとの考えからだ。

 しかし、国際貢献の理念よりも、実際は日本側の「労働力の確保」に利用されてきた側面がある。ルールの形骸化が黙認されてきたとも言え、偽装は、ベトナムに限らず、中国など他国の実習生にも共通する問題だとの指摘もある。

 制度に詳しい上林千恵子・法政大教授(産業社会学)は「ベトナムの業者からも、新在留資格での再来日が認められないという懸念が出ている。日本に必要な人材が働けないのであれば本末転倒。前職要件の意義は薄れており、現実を踏まえて是非を議論する時期に来ている」と指摘する。

 外国人労働者を巡る制度は、技能実習と新在留資格の二つが今後も併存する形となる。古い制度の弊害が、新制度の足かせになることがないよう、国の対応が求められる。

(社会部 村上和史)

前職要件

 「日本で従事しようとする業務と同種の業務経験が必要」などとする法務、厚生労働両省令の規定。実習制度は途上国支援が目的で、母国で一定の経験を持つ人が、より高い技術を日本で学び、帰国後に生かしてもらう趣旨で設けられている。

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654020 0 ニュース 2019/06/24 06:05:00 2019/06/24 06:05:00 2019/06/24 06:05:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190624-OYO1I50000-T.jpg?type=thumbnail

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