餃子で腹ペコ学生励まし40年、来月閉店

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「若者に元気をもらい、いい思い出ばかり」と話す井上定博さん(15日、京都市上京区で)=土屋功撮影
「若者に元気をもらい、いい思い出ばかり」と話す井上定博さん(15日、京都市上京区で)=土屋功撮影
閉店が決まった餃子の王将出町店。おなかをすかせた学生へのメッセージが掲示されている
閉店が決まった餃子の王将出町店。おなかをすかせた学生へのメッセージが掲示されている

 「めし代のない人 おなかいっぱい食べさせてあげます」――。そんなはり紙を掲げ、皿洗いを条件に苦学生らに無料で食事を提供してきた「餃子ギョーザの王将」出町店(京都市上京区)が10月末で閉店する。店主の井上定博さん(70)が古希の節目に決断した。井上さんの厚意を受けた学生は40年近くで延べ約3万人に上り、店には感謝と惜しむ声が寄せられている。(大川哲拓)

先輩の厚意原点 

 京都大や同志社大の学生らの下宿が多い街角にある店内は、昼になると若者らでいっぱいになる。厨房ちゅうぼうで、大きな中華鍋を力強く振る井上さんは「損も得もない。困っている人の力になりたいという気持ちだけやった」と名残惜しそうに話す。

 井上さんは京都市伏見区で生まれ、20歳の時、妻と駆け落ちして大阪に出た。6畳一間のアパートで暮らし、貧乏暮らしで食費も切り詰めていたある日、職場の先輩が夕飯にすき焼きをごちそうしてくれた。

 「どんだけ貧乏でも、満腹にさえなれば幸せになれるんや」。この経験が原点となった。

島耕作に登場 

 王将に入り、別の店の店長になった1982年から「社会に恩返しをしたい」との思いで「皿洗いで無料」のサービスを始めた。95年に、出町店のオーナーになってからもサービスを続け、口コミで学生街の名物になった。2003年には、人気漫画「島耕作シリーズ」にも取り上げられた。

 井上さんによると、これまでに皿洗いを経験したのは延べ約3万人。親からの仕送りが届かない、試験勉強が忙しくてバイトに行く余裕がない――。学生が皿洗いにすがる理由は様々だ。

 店に置かれたノートには、「バイト代が入ったら(お金を持って)食べに来ます」などお礼の言葉があふれている。卒業して就職してから感謝の気持ちを伝えに来る人が多く、恋人を連れて、「結婚します」と報告に来た男性もいたという。

 衛生上の理由で2年前に皿洗いは中止し、今は「昨日からご飯を食べていない人」などに限り、対価を求めず食べさせている。

 井上さんは「新型コロナウイルスで学生の暮らしが大変な時に店をしまうのは心残りやけど、ここで出会えた人たちは一生の宝物や」と顔をほころばせた。

惜しむ声続々 

 店には、閉店を知ったかつての若者から、花束や感謝の手紙が届いている。

 大阪府東大阪市で金属加工の町工場を営む男性(32)は「大将の優しさがあったからこそ、今の自分がある」と振り返る。

 同志社大に通いながらお笑い芸人を目指して一人暮らしをしていた頃、月10回以上、皿洗いをした。「大将は嫌な顔一つせずにギョーザとから揚げを作って『有名になれよ』って声をかけてくれた」と懐かしむ。

 6年前に急逝した父親の後を継いで町工場を切り盛りする。「お金だけじゃなくて、周りの人に優しくすることが何よりも大切だと教えてくれた。私にとって大将は『京都の親父おやじ』です」

 徳島県那賀町の萬福寺の副住職(34)も学生時代に店に通い詰めた。空腹時に食べさせてもらったレバニラ定食の味が今も忘れられないという。閉店するまでに店を訪ね、井上さんに直接感謝の思いを伝えるつもりだ。

 「田舎から出てきて心細かったが、すぐに顔と名前を覚えてくれた。『困っている人を助ける』という、僧侶として生きる自分の原点になった」と語った。

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1502927 0 ニュース 2020/09/26 15:00:00 2020/09/26 15:00:00 2020/09/26 15:00:00 閉店することになった餃子の王将出町店で鍋を振る井上定博さん(15日午後3時39分、京都市上京区で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200926-OYO1I50009-T.jpg?type=thumbnail

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