大阪都構想、住民サービスどうなる?…ファクトチェック

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 「住民サービス グ~ンとUP」

 「間違いなく住民サービスは下がります」

 「大阪都構想」が実現した場合、大阪市を廃止して新たに誕生する四つの特別区の住民サービスについて、賛成派は「上がる」、反対派は「下がる」と、180度違う主張を展開している。来月1日に迫る住民投票の投開票に向けた舌戦も最終盤を迎え、強調の度合いは増している。両派の主張を検証する。

住民サービスについての主張を紹介する賛成(上)、反対両派のビラ。賛成派は「上がる」、反対派は「下がる」と強調している
住民サービスについての主張を紹介する賛成(上)、反対両派のビラ。賛成派は「上がる」、反対派は「下がる」と強調している

 都構想の制度案をまとめた協定書には「特別区の設置の際は、市が実施してきた特色ある住民サービスについては、その内容や水準を維持する」と明記されている。特別区の設置は、2025年1月1日。つまり、この時点での住民サービスの継続は保証されている。

 「特色ある住民サービス」が何なのか、明文化はされていない。だが、制度案を議論してきた政党間の協議で、70歳以上の市民が地下鉄やバスに1回50円で乗れる「敬老優待乗車証(敬老パス)」や、中学生のいる家庭に月額最大1万円を支給する「塾代助成」などを対象とすることで合意している。

 賛成派と反対派の主張が分かれるのは、特別区の設置後についてだ。協定書には「地域の状況や住民のニーズも踏まえながら、その内容や水準を維持するよう努める」と記されている。

 特別区は独立した自治体で、選挙で選ばれる区長や区議会を置く。どんなサービスを展開するかは区長や区議会の判断次第となる。

 一般的に自治体の財政が豊かなら住民サービスは充実し、厳しいと打ち切られたり、低下したりする。

 賛成派は、二つの試算を根拠に住民サービスは向上すると主張している。

 一つは、大阪府と市の副首都推進局が特別区設置から15年間について算出した財政試算で、4特別区は黒字を維持し、全体の黒字額は年17億~77億円になるとした。

 もう一つは、府と市から委託されて学校法人「嘉悦学園」(東京)が算出したもので、特別区では、業務の効率化によって10年間で最大計1・1兆円の歳出(支出)削減が可能になるとの見通しだ。

 しかし「4特別区とも黒字」の試算は、特別区が市から引き継ぐ「大阪メトロ」株の配当金について、新型コロナウイルスによる業績落ち込みの影響を考慮していない。賛成派は「特別区移行時には新型コロナの影響を脱している」とするが、反対派は「影響を加味すれば、赤字になる」と批判する。「1・1兆円の歳出削減」も、経済学者の間では評価が分かれている。

 一方、反対派が住民サービス低下の根拠に挙げるのは、特別区の移行に伴い、「約1340億円」のコストがかかるとしている点だ。

 これは反対派が独自に試算したコストで、内訳はシステム改修費などの初期コスト464億円、特別区設置後15年間、システム維持などに要する運営コスト525億円などとなっている。

 だが、府と市は移行コストについて、初期コスト241億円、運営コスト年30億円と試算している。

 初期コストに大幅な開きがあるのは、特別区の新庁舎を建設するかどうかで見解が割れているためだ。

 府と市は、新庁舎を建設しないことを前提に試算しているが、反対派は、新・北区の本庁舎(現大阪市役所)の一部を間借りすることになる新・淀川区と新・天王寺区については、「いずれ新庁舎が必要になる」とし、それらの建設費約200億円などを含めた。

 新庁舎を建設しないことは制度案の合意事項だが、将来的に区長や議会がどうするかまでを拘束するものではない。この点で反対派は府と市の試算からさらにコストを独自に上乗せした。

 つまり、住民サービスをめぐる賛成派と反対派の主張は、いずれも不確定な仮定や不十分な前提を根拠にしている。よって、住民サービスは、上がるとも下がるとも言い切れない。

(松久高広)

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1586861 0 ニュース 2020/10/29 06:00:00 2020/10/30 14:55:46 2020/10/30 14:55:46 住民サービスの向上を訴える地域政党・大阪維新の会のビラ https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201029-OYO1I50009-T.jpg?type=thumbnail

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