被災地支援、まず地元が…遠方とはオンライン交流
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2018年7月の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市。6か所の仮設団地で20年の春先、集会所のホワイトボードから行事予定がほとんど消えた。
新型コロナウイルス感染症が流行の兆しを見せ、ボランティア団体などが一斉に支援活動を取りやめたからだ。
学生たちが高齢の被災者らと一緒にラジオ体操をしたり、サンドイッチを作ったりして交流を続けてきた中央大も中止を決めた。前回の訪問時に「また帰ってきます」と約束したのに、果たせなくなってしまった。「築いてきたつながりが消えてしまうのでは」。学生団体代表の阿佐美有沙さん(20)は不安を感じた。
自宅を再建できた人たちは次々と去って行く。当時、柳井原仮設団地で暮らしていた古田克明さん(75)は「仮設が歯の抜けたようになっていく上に外からも人が来なくなり、取り残された感じが強まって寂しかった」と振り返る。
熊本の力
「ボランティア元年」と呼ばれた阪神大震災以降、被災地にボランティアが全国から参集する光景が定着した。コロナ禍はそんな活動を制約してしまう。こんな時に災害が起きたら、どうなるのか。不安が募る中で昨年7月初め、九州南部を豪雨が襲った。
NPO法人・くまもと災害ボランティア団体ネットワーク(
各地で地域限定の募集が始まった。受付窓口での密集を避けるため、事前登録制にしたり整理券を配布したりする工夫がなされた。参加者の検温や消毒も徹底された。重機でのごみ撤去など地域で対応できない活動に限って県外の団体に要請し、乗り切った。
半年間で活動したボランティアは約4万人。16年の熊本地震では同期間で全国から約12万人が集まった。今回は県内限定だったことを考えれば、相当の人数が集まったと言える。
コロナ禍は地域の力を見直す契機を与えた。「地域の絆で支え合うのは本来の姿。いつしか、ボランティアが来てくれて当たり前という風潮になっていなかったか」と樋口さんは問う。南海トラフ地震のような広域災害では、外部からの支援は期待できない。地域内で行政とボランティア団体、住民が連携できる仕組みを平時から整備しておくことが求められている。
距離気にせず
「後ろに見える土地で野菜を育てているんですか」。ボランティア団体・神戸大学学生震災救援隊の堀田ちひろさん(20)が、パソコンの画面越しに話しかけた。
19年10月の台風19号で被災した宮城県丸森町の住民との交流が昨春以降、途絶えていた。再開する方法を議論し、ネット上での交流会を思いついた。
昨年9月に開いた「オンライン神戸カフェ」には2日間で住民20人が参加した。家に引きこもりがちな人が多く、話が弾んだ。「ネットの技術があれば、みんなとしゃべれることがわかって前向きになれた」と喜ぶ声も聞かれた。距離を気にせずに話ができる手応えを感じた堀田さんは、今後も続けるつもりだ。
倉敷市の仮設団地でも、中央大の学生によるオンライン交流会が始まった。画面越しに見る被災者の笑顔に、阿佐美さんは「自分にできることを模索して行動を起こせば、よい影響を少しでも届けられる」と感じた。困難を乗り越える工夫が、被災者支援に新たな形を生み出している。(編集委員・川西勝、岡山支局・岡信雄)