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【被災地をつなぐ】(上) 見守り 遺志を継ぐ、「仮設のマザー・テレサ」に感銘

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黒田さんへの感謝の思いを語る三浦さん。宮城県気仙沼市でネットワークなどが行った活動の記録は約40冊のファイルにまとめられ、市役所で保管されている(昨年12月)
黒田さんへの感謝の思いを語る三浦さん。宮城県気仙沼市でネットワークなどが行った活動の記録は約40冊のファイルにまとめられ、市役所で保管されている(昨年12月)

 阪神大震災を知る人たちは、3月で発生から10年となる東日本大震災の被災地で、生活再建などについて様々な経験を伝え、被災者に寄り添ってきた。未曽有の災害をつないだ人々の足跡をたどった。

 津波などで1432人が犠牲になった宮城県気仙沼市。153戸の仮設住宅があった面瀬おもせ中学校では、関西から駆けつけたNPO法人「阪神高齢者・障害者支援ネットワーク」(解散)が2015年3月まで、24時間体制で被災者の見守り活動を続けた。

 「私がいる限り、絶対に孤独死は出させない」。中心にいた看護師・黒田裕子さん(2014年9月に73歳で死去)の口癖だ。実際、この仮設では誰一人孤独死することはなかった。 

 阪神大震災の発生時、兵庫県宝塚市立病院の副総看護婦長だった黒田さんは5か月後、「被災者が抱える多様な悩みに応えたい」と、神戸市内で最大規模の「西神第7仮設住宅」(1060戸)に移り住み、一軒一軒ノックして住民の話を聞いて回る活動を始めた。避難生活の長期化で亡くなる災害関連死や孤独死が問題になっていた。

 約4年後に仮設は解消されたが、黒田さんは他の被災地へと活動を広げていく。新潟県中越地震や四川大地震などあらゆる災害現場に出向き、いつしか「仮設のマザー・テレサ」と呼ばれるようになった。

 黒田さんは11年4月から肝臓がんで亡くなる前月の14年8月まで、月1、2回気仙沼に通った。お茶会や体操を始めて被災者同士の交流を促し、「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」と声を掛け合う雰囲気ができた。被災者には携帯電話の番号を教え、深夜の相談に何時間でも応じた。被災者の近くに作業台を置き、未明までパソコンに向かった。そして、朝5時には掃除を始めていた。

 黒田さんに誘われ、11年7月から見守り活動に加わった気仙沼市の看護師・藤田アイ子さん(70)は、黒田さんから「ごみ箱の中に命がある」と教えられた。被災者の体調や暮らしぶりを、ごみや衣類、ガスメーターなどのわずかな手がかりから察した。

 その後「ネットワーク」の現地責任者となり、黒田さん不在時の活動を担った藤田さんは、今でも黒田さんの夢を見るという。「生前のように足早に歩いていて。またどこかに行って誰かを助けているのかなって」

 発生翌日から面瀬中の避難所で被災者の健康管理にあたった気仙沼市職員の保健師・三浦京子さん(59)も、黒田さんに背中を押された一人だ。

 避難所にやってきた黒田さんは、「24時間大丈夫だから」とこともなげに言った。被災者のことを一番に考え、土足で避難所に入ろうとしたボランティアを、「避難所の中は被災者の家なのよ」と厳しく注意した。

 三浦さんが何よりも感銘を受けたのは、1000キロも離れた見知らぬ土地で、ずっとボランティアで活動を続けてくれたその熱意だ。

 黒田さんが亡くなる10日ほど前、三浦さんは夜行バスで入院先の兵庫県に向かった。「カツオの握りが一つ食べたい」と聞き、氷詰めにした気仙沼産カツオを携えた。体調が優れない様子の黒田さんは「面瀬のことお願い。疲れたから寝るね」と言葉を絞り出した。

 今春で定年を迎える三浦さんには、決意がある。市が交付金の打ち切りを機に今年度で終了する「まちの保健室」を有志のボランティアで続けることだ。月に1回、市内の商業施設で住民の健康相談を受け付ける事業。孤立しがちな男性の利用も多く、被災者の見守りにつながっている。

 「生活の全てを支援にかけた黒田さんのようにはいかないでしょう」と三浦さん。体力や資金面で不安は尽きないが、黒田さんならいつものようにこう言ってくれるはずだ。「それでいいのよ」

(石見江莉加)

孤独死が問題に

 阪神大震災で兵庫県が建設した仮設住宅は約4万8000戸に上る。コミュニティーが分断され、近所付き合いがなくなった高齢者らが、誰にもみとられずに亡くなる孤独死が問題になった。

 住民の退去がおおむね終了した1999年5月までに、孤独死は233人に上った。災害公営住宅(復興住宅)でも孤独死は相次ぎ、県警によると、2000年から20年までに計1243人(被災者以外の入居者を含む)が確認されている。

 その後の災害でも孤独死はなくならず、東日本大震災では243人(読売新聞まとめ)が亡くなった。

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1770210 0 ニュース 2021/01/14 15:00:00 2021/01/14 15:00:00 2021/01/14 15:00:00 黒田裕子さんが残した資料について語る三浦京子さん(15日午後6時55分、宮城県気仙沼市で)=武藤要撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/01/20210114-OYO1I50006-T.jpg?type=thumbnail

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