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【被災地をつなぐ】 (下) 語り合う 記憶なくとも 東北移住26歳、同世代を支え

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東北の被災者の壮絶な体験を紹介し、「自分たちの子どもが同じ目に遭わないよう防災について考えてほしい」と母校の生徒に語る久保さん(15日、神戸市垂水区の兵庫県立舞子高校で)=宇那木健一撮影
東北の被災者の壮絶な体験を紹介し、「自分たちの子どもが同じ目に遭わないよう防災について考えてほしい」と母校の生徒に語る久保さん(15日、神戸市垂水区の兵庫県立舞子高校で)=宇那木健一撮影
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津波の教訓を語る菊池のどかさん(岩手県釜石市の「いのちをつなぐ未来館」で)
津波の教訓を語る菊池のどかさん(岩手県釜石市の「いのちをつなぐ未来館」で)

 東日本大震災で1064人の死者・行方不明者が出た岩手県釜石市。犠牲者の6割が集中した鵜住居うのすまい地区に昨年8月、神戸市生まれの久保力也さん(26)が移り住んだ。

 阪神大震災の前年に生まれた久保さんに、その激しい揺れの記憶はない。防災を専門に学ぶ「環境防災科」が震災を機に開設された兵庫県立舞子高校(神戸市垂水区)に進学したのも、「家から近く、学校説明会で海外視察に行けると聞いて何となく面白そうだと思った」という理由だけだった。

 転機は高校1年の終わりに起きた東日本大震災だ。1か月後から計8回、岩手、宮城両県の被災地でボランティアに携わった。泥かきなどをして感謝され、やりがいを感じる一方で、少しの支援では被災者の暮らしが良くならないことに無力感を覚え、継続して関わる大切さを実感した。

 自分は生まれ育った「阪神」のことを知らなかった。東北でもいつか、震災の記憶は消えていくのだろうか。自分にできることは何か――。自問するうち、環境防災科長だった諏訪清二さん(60)の言葉を思い出した。

 「若者こそ語らなあかん。震災を体験していなくても、被災者の言葉は紹介できる。自分が語るんじゃなく、『語り継ぐ』んや」

 京都の大学に進むと、毎年夏に関西の学生らとバスで東北に向かい、同世代の被災者と語り合う交流会を始めた。大学卒業後もフリーで防災の講演活動などをしていた久保さんが鵜住居に移ったのは、被害の大きかった地域で防災の啓発に関わりたいと思ったからだ。

 昨年10月には、防災教育の教材開発などを行う会社を鵜住居に設立。「被災者の声を聞きながら、命を落とさない防災教育を広め、被災体験の伝承に取り組みたい」と意気込んでいる。

 釜石市の菊池のどかさん(25)は、そんな久保さんに触発された。

 市立釜石東中3年で、卒業式を2日後に控えたあの日、大きな揺れの後、隣の鵜住居小の児童の手を引いて高台に逃れた。街は津波にのみ込まれたが、学校にいた小中学生約570人は全員が助かり、「釜石の奇跡」と称賛された。

 高校時代、被災体験を語るよう求められる機会が増えた。多くの犠牲者が出た地区の惨状を語ったが、メディアで取り上げられるのは「奇跡」ばかり。「どうしたら本当のことが伝わるのだろう」と思うと急に言葉が出てこなくなり、岩手県立大2年の時、語ることをやめた。

 そんな頃、高校時代に地区を案内したことがあった久保さんから交流会に誘われた。震災の記憶がない久保さんが、語り伝えようと頑張っている。震災を体験した自分はどうなのか。「人が求めるものではなく、自分の言葉でもっと語るべきだ」と感じた。

 2019年に地区にオープンした津波伝承施設「いのちをつなぐ未来館」に就職。全国から訪れる人々に津波の「惨状」と「奇跡」を伝えてきた。語り部活動には胸を張れるようになったが、災害が多発する中、1人で教訓を伝えるだけでは、防災意識を高めるのに限界があると感じ始めた。

 この春には久保さんの会社に入り、一緒に防災教育の教材やプログラムを作っていくつもりだ。「新しい防災教育のあり方を考えれば、もっと助かる命を増やせるのではないか」。そう信じている。(諏訪智史)

語り部の高齢化課題に

 阪神大震災の被災経験を伝える語り部は、高齢化が課題となっている。兵庫県の防災研究機関「人と防災未来センター」(神戸市)に登録している語り部は、近年40人前後で横ばいだが、9割が60歳以上だ。

 自治体職員も震災を知らない世代が増え、神戸市では今年度、震災後の採用者が全体の62%と、初めて6割を超えた。市は新人職員に避難所運営などを疑似体験してもらう研修を行い、震災を経験した職員が指導にあたるなど、記憶の継承に力を入れる。

 一方、岩手県釜石市では昨年度、語り部の認定制度を開始。昨年末時点の認定者83人のうち、4割が30歳代以下で、10歳代も16人いる。市の担当者は「防災教育が広く浸透し、学生の希望者が増えている」としている。

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1774833 0 ニュース 2021/01/16 15:00:00 2021/01/16 15:00:00 2021/01/16 15:00:00 東日本大震災の被災地を訪れた際の経験を生徒に語る久保力也さん(15日午前11時11分、神戸市垂水区で)=宇那木健一撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/01/20210116-OYO1I50007-T.jpg?type=thumbnail

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