刑務所、コロナとの闘い…京都コングレスで刑務所長が実態報告
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刑務所など矯正施設での新型コロナウイルス対策が世界的な課題となっている。閉鎖空間で集団生活が行われるため、一気に感染が拡大するリスクが高いからだ。7日に京都市で開幕する第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)の関連行事で、京都刑務所(京都市山科区)の大竹宏明所長が実態を報告する。(松崎遥)
「いかに外からウイルスを持ち込まないか。神経をとがらせている」。取材に応じた大竹所長は話した。
京都刑務所では法務省が策定した指針に沿い、新たな入所者は全員、単独室に14日間収容し、健康状態を観察している。さらに、敷地内の1棟は感染が疑われる人を集める「患者隔離エリア」とし、扉は手を使わず足で開閉できるよう改装した。マスクを二重にした上でフェースシールドを着ける刑務官も多い。約1000人の受刑者にも二重着用を推奨している。
全国の矯正施設では2月末時点で職員116人、収容者256人がコロナに感染しているが、京都刑務所はこうした取り組みもあり、感染者を出していない。
一方で、各刑務所では感染防止のため、受刑者が外部と交流する機会も減らされ、弊害も出ている。
京都刑務所でも、就労支援で年数回開く企業説明会が、今年度は1回もなかった。昨年度は20人いた収容中の就職内定者は、今年度まだ5人だ。受刑者が作った家具などを販売する「矯正展」も開催が見送られた。
大竹所長は「受刑者は社会とのつながりを絶たれ、孤独になりかねない。一般の方に矯正を理解してもらう機会が減ったのも残念」と危機感を示す。
矯正施設の感染対策は世界的な課題だ。AFP通信によると、フィリピンの拘置所では過密状態を緩和するため、昨年5月までに収容者約1万人が釈放された。
大竹所長は8日、法務省が主催する京都コングレスのサイドイベント(関連行事)「矯正施設における新型コロナウイルス感染症対策」で、海外の研究者らと意見交換する。「日本の徹底した衛生管理を世界に伝えるとともに実践的なアイデアを吸収したい」と話している。