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最期の時間、家族と一緒に…コロナ禍の面会制限受け、在宅看取り増加

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生前の父の写真を手に、看取った思いを語る女性(兵庫県尼崎市で、画像の一部を修整しています)=東直哉撮影
生前の父の写真を手に、看取った思いを語る女性(兵庫県尼崎市で、画像の一部を修整しています)=東直哉撮影

 新型コロナウイルスの感染予防のために医療機関や高齢者施設で面会が制限されるなか、最期の時間を一緒に過ごしたいと、家族を自宅で看取みとる人が増えている。医師らは「コロナ禍で在宅看取りが終末期の一つの選択肢になりつつある」とする。(藤本綾子)

会えない日々

 「手を握って『お父さん、ありがとう』と言えた。心残りはありません」

 兵庫県尼崎市に住む看護師の女性(63)は1月、父親(89)を自宅で看取った。郷里の富山県で暮らしていた父親は、2年前の交通事故をきっかけに入退院を繰り返すようになり、徐々に衰弱。実家の母親が度々見舞っていたが、コロナの感染拡大で、昨春以降はほとんど会えなくなった。

 「このまま父を一人で逝かせるのはつらすぎる」と昨年11月、女性が尼崎市の自宅マンションに引き取った。母親も呼び寄せ、在宅医や訪問看護師らの力を借りて、約2か月を過ごした。

 入院中はほとんど口から食べられなかったが、家ではジュースが飲みたいと訴え、口に含むと満足そうにうなずいた。夫婦仲が良かった両親。「母は父の世話ができてうれしかったようです。父も母がそばにいて安心できたはず」と振り返る。最期は女性と母親、同居する娘、富山から駆けつけた弟の4人でベッドを囲み、お別れをした。

選択肢

 女性らを支えたのは尼崎市で長く在宅医療に携わる医師の長尾和宏さん。院長を務めるクリニックでは、年間150件前後だった自宅での看取りはこの1年で1、2割増えた。

 多くの医療機関や高齢者施設では感染予防のために、家族の面会を禁止したり、制限を設けたりしている。最期に立ち会えないケースもあり、在宅医療への関心は高まっているという。

 長尾さんは「一つの選択肢として、家で看取ることを前向きに考える人が出てきたのは良い変化だろう」と話す。

 在宅医療専門のクリニック15か所を首都圏で運営する医療法人悠翔会(東京)でも、昨年4月から今年2月末までの在宅看取りは502件で、前年同期より7割近く増えた。

 厚生労働省の統計では、2019年に亡くなった人のうち自宅での死亡は13・6%で00年以降横ばいが続き、病院では71・3%だった。

 在宅医らでつくる日本在宅医療連合学会(同)の蘆野吉和会長は「地域差はあるが、コロナ禍で在宅看取りが増えているところが多いようだ」と分析する。

 従来、病院の医師には「最期まで治療を行うことが医師の責任」と考え、看取りが近い患者を退院させることに消極的な人も少なくなかったというが、「在宅看取りにつなぐ経験を重ね、医療者側の意識も変わりつつある。在宅への流れは今後も続くのではないか」と話している。

支える訪問看護や介護、続く人手不足

 在宅看取りを支える訪問看護や訪問介護は、深刻な人手不足が続いている。

 国は高齢化を背景に在宅医療を推進し、2006年以降、医師か看護師が24時間対応する在宅療養支援診療所・病院を制度化。厚生労働省によると1万5598か所(2019年)あるが都市部に集中し、地域に一つもないという自治体は2割強に上る。また、訪問介護職の19年度の有効求人倍率は15・03倍で、施設介護職の4・31倍を大きく上回る。コロナによる感染不安などから離職も進む。

 淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は「看取りには通常以上に手厚いケアが必要で、現状では環境に恵まれたごく一部の人しか実現できない。在宅医療には人材確保が不可欠で、国や自治体は積極的に財政支援をすべきだ」と指摘する。

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1985089 1 ニュース 2021/04/14 15:00:00 2021/04/14 15:00:00 2021/04/14 15:00:00 生前の父の写真を手に、在宅見取りの経験を語る女性 ※携帯画面に女性の名前が入っているので使用時には注意ください。記事中は匿名とのことです(11日、兵庫県尼崎市で)=東直哉撮影※※ネット不可 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210414-OYO1I50002-T.jpg?type=thumbnail

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