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心も満腹、子どもが作る「弁当の日」 香川で始まり20年…全国2000校に広がる

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母親が見守る中、弁当作りで台所に立つ子どもたち(2021「弁当の日」製作委員会提供)
笑顔で弁当を食べる生徒ら(2021「弁当の日」製作委員会提供)
「弁当の日」を始めた竹下さん

 子どもたちが自分で作った弁当を学校に持ち寄って食べる「弁当の日」が、香川県綾川町で始まってから今年で20年となった。食育の一環として四国の小さな町で生まれた取り組みは、その後、全国各地に広がった。子どもたちが成長していく姿を記録したドキュメンタリー映画も制作され、今月から全国で上映会が開かれている。(林信登)

食べ物に感謝

 弁当の日は2001年、香川県綾南町(現・綾川町)の滝宮小学校の校長だった竹下和男さん(72)の発案で始まった。給食を残す児童を見て、「食べ物への感謝の気持ちを持ってほしい」と感じたのがきっかけだ。

 月1回、児童が自ら献立を考えて買い物に行き、自宅で調理し、学校で食べる日。保護者からは「朝は時間に余裕がない」「包丁を持たせるのが怖い」などの声もあったが、しばらくすると、給食を完食する児童が大幅に増えたという。

 保護者から「親子の会話が増えた」、子どもからも「親への感謝の気持ちが強くなった」などの反応もあった。竹下さんが04年に講演活動を始めると、取り組みは徐々に広がり、これまでに全国の小中高校など2000校以上で実施された。宮崎県は条例で弁当の日を推奨し、宇都宮市では08年度から全小中学校で年2回実施。大阪府や奈良県の一部の学校でも行われてきた。

 取り組みは親から子に受け継がれてもいる。竹下さんが校長時代、小学4年だった橋本衣理さん(29)は「台所に立つのがうれしくて、弁当の日が楽しみだった。食事を作ってくれる人への感謝の気持ちを持つことができた」と振り返る。2児の母親となった今、3歳の長男を台所に立たせているという。

映画化

 弁当の日に共感した1人が、ノンフィクション作家の安武やすたけ信吾さん(57)だ。末期がんと闘いながら、幼い娘に食の大切さを伝える母親を描いた「はなちゃんのみそ汁」の原作者で、「もっと多くの人に弁当の日を知ってほしい」と、映画化を企画した。

 タイトルは「弁当の日 『めんどくさい』は幸せへの近道」(全編97分)。自らメガホンを取り、19~20年に綾川町のほか、福岡県や山口県などの小中学校などで、弁当の日にまつわるストーリーを約1年2か月かけて撮影した。

 弁当をきっかけにクラスメートと会話が増え、不登校を克服していく男子中学生。初めてのみそ汁作りに四苦八苦していた小学1年の男児は、進んで洗い物もするようになった。カメラに緊張していた子どもたちも、撮影を重ねるうちに自然な表情を見せ、食育を通じて成長する姿が描かれる。

 弁当の日を経験した男子高校生が、進学のため上京する朝。初めて家族のために作ったみそ汁を飲んだ父親が涙する場面に出会った安武さんは「心が伝わってきて、手の震えが止まらなかった」と話す。

 今も講演活動を続ける竹下さんは「弁当の日は家族の絆を深め、子どもの健やかな成長につながる。映画で取り組みがさらに広がり、子どもが料理をする光景が当たり前になってほしい」と語る。

 映画は4月から、個人や団体の依頼を受けて自主上映会が開かれている。上映予定や上映の申し込みは映画の公式サイト(https://bento-day.com/)から。

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