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街角の壁画 庶民アート コロナ禍に医師へエール、休業店に広告

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壁一面に描かれたナイチンゲール。医療従事者への感謝が込められている(大阪市淀川区で)=東直哉撮影
壁一面に描かれたナイチンゲール。医療従事者への感謝が込められている(大阪市淀川区で)=東直哉撮影
神戸市役所2号館の壁画。現在は解体工事が進められている(昨年10月、神戸市中央区で)
神戸市役所2号館の壁画。現在は解体工事が進められている(昨年10月、神戸市中央区で)

 景観を壊す「落書き」として厄介者扱いされてきた街角の壁画を活用する動きが広がっている。正体不明の芸術家バンクシーの存在やSNSの普及が後押し。社会へのメッセージを狙って自治体や所有者が制作を依頼した「リーガルウォール(合法的な壁画)」に加え、コロナ禍で休業中の店舗の壁やシャッターなどを使ったビジネスも生まれている。(中西千尋)

 ■ 区役所も協賛

 大阪市淀川区の区役所横のビルの壁一面に色鮮やかに描かれたナイチンゲールの肖像画(縦約10メートル、横約5メートル)を道行く人たちが時折足を止めて見上げる。中にはスマートフォンを向け、撮影する人もおり、SNS上で「迫力に驚いた」「ディテール(細部)に感動」などと話題になっている。

 壁画には、新型コロナウイルスと懸命に戦う医療従事者への敬意とエールが込められている。アーティストのBAKIBAKIさん(42)が、ビル所有者の許可を得て手がけ、区役所も協賛する。今年3月に1週間かけて完成させた。

 BAKIBAKIさんは「街そのものに絵を描く感覚。壁画は美術館に行かない人にも届く最も庶民的なアートなんです」と話す。

 ■ 「落書き」で摘発

 街中の壁などにスプレーで描いた絵や文字は「グラフィティ」と呼ばれ、1990年代、米ニューヨークが発祥とされる。国内でも東京や大阪など大都市を中心に広がった。

 ただ、公共の施設や民家、文化財などに勝手に描かれることも多く、器物損壊や文化財保護法違反などの容疑で摘発されるケースも相次いだ。「落書き」を放置することがさらなる犯罪を招きかねないとして東京都渋谷区のように消すための予算を組むなど対策を進める自治体もある。

 ■ 偏見を払拭

 一方、近年はネガティブな印象が覆されつつある。

 落書き問題に詳しい東京都市大の小林茂雄教授(建築学)は「壁画は予定調和的に現れる広告とは違う衝撃を与え、見る者を楽しませる側面もある」と話し、目を引く壁画を手軽に撮影して共有するSNSの浸透が一役買っていると指摘する。街頭に風刺の利いた絵を描くバンクシーは世界的に注目を集めている。

 自治体や建物の所有者も街の活性化に活用。解体工事中の神戸市役所2号館の外壁に昨年8月に描かれた神戸の海山や花時計などをモチーフにした巨大壁画も話題を集めた。

 大阪市淀川区のナイチンゲールの肖像画や神戸市役所のプロジェクトにも関わったベンチャー企業「WALL SHARE」(大阪市北区)は今春、新たな企画を始めた。企業と連携し、コロナ禍で休業したり、閉店したりした店舗などの壁やシャッターをアート広告に活用。広告料の一部を店舗経営者や不動産所有者に渡すだけでなく、アーティストが広告を描く様子を街行く人に楽しんでもらう。

 代表の川添孝信さん(30)は「身近なアートの力で、地域を元気にしたい。根強く残る偏見を 払拭ふっしょく し、魅力を広められれば」と話す。

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2167438 1 ニュース 2021/06/30 15:00:00 2021/06/30 15:00:00 2021/06/30 15:00:00 医療従事者に向けた感謝の気持ちを込め、ビルの側面に描かれた壁画(6月16日、大阪市淀川区で)=東直哉撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210630-OYO1I50001-T.jpg?type=thumbnail

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