つまようじ 日本製守る…大阪・河内長野の老舗女性社長、火災被害からの再起誓う

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全焼した「菊水産業」の事務所と倉庫(10月撮影、同社提供)
全焼した「菊水産業」の事務所と倉庫(10月撮影、同社提供)
「菊水産業」の末延社長。2台ある機械の1台は被害を免れた(大阪府河内長野市で)
「菊水産業」の末延社長。2台ある機械の1台は被害を免れた(大阪府河内長野市で)

 つまようじの産地として知られる大阪府河内長野市で10月、老舗つまようじメーカーが火災に遭い、廃業の危機に陥った。安価な中国製品に押されて国内に残るメーカーは他に1社しかない。国産の灯を絶やしたくないと、クラウドファンディングで再建資金を募ったところ、目標額の3倍近い850万円が集まった。4代目の女性社長は「期待に応えたい」と再起を誓っている。(小野田潤)

もらい火で焼失

 火災に遭ったのは1960年創業の「菊水産業」(従業員5人)。10月9日昼頃、休日出勤してきた社長の 末延すえのぶ 秋恵さん(43)が、建屋が燃えているのに気付き、一緒にいた従業員が119番した。建屋の事務所と倉庫部分が全焼し、延焼を免れた工場部分も消防車の放水で水浸しになった。

 近所の農家が稲刈り後のワラを畑で焼いていたのが周辺に燃え広がり、飛び火したとみられる。

 末延さんにとって、事務所や工場は、大好きだった祖父の 場工ばく 耕司さんの思い出が詰まった場所だった。幼い頃、そろって教師をしていた両親は忙しく、当時社長だった耕司さんに預けられることが多かった。たびたび事務所で過ごし、ようじを木箱に詰める作業もよく手伝った。今も、「つまようじは地元の誇り」と話す祖父の姿を思い出すという。

祖父の遺志継ぐ

 末延さんは専門学校を卒業後、介護福祉士として働いていたが、耕司さんが2011年に亡くなった後、社長を務めていた叔父から「会社をたたもうと思う」と打ち明けられた。周囲の同業者が次々に廃業していく中、「祖父が守ってきた国産ようじの灯を消したくない」と後を継ぐことを決意。将来、社長を引き受ける約束で14年に入社した。

 菊水産業は国産材にこだわり、主に百貨店向けの高級ようじを手掛けている。末延さんは入社後、全国を飛び回って営業する一方、SNSのツイッターによる情報発信にも力を入れた。京都の料亭や海外の飲食店からも注文が入るようになったという。

 今年8月、叔父から正式に社長を託された。

目標額の3倍近く

 火災に見舞われたのは、その1か月あまり後だった。「何か悪いことでもして、バチが当たったんやろか」と自分を責めたが、幸いにも、工場にあった2台の製造機のうち、1台はスイッチを入れると動いた。

 いずれも約50年前に製造されたもので、部品もなく、修理さえ難しい。

 「2台とも壊れたら廃業するしかなかった。おじいちゃんに『もう少し頑張れ』って言われた気がした」

 SNSで火災に遭ったことをつぶやくと、「力になりたい」「復旧を応援します」などのメッセージが多数寄せられるとともに、クラウドファンディングを勧められた。11月1日から1か月半の予定で資金を募り始めると、わずか9時間で目標額の300万円に。18日時点で約870人から約850万円集まっている。

 末延さんは出資してくれた人には氏名を記した袋入りのようじなどを贈るつもりだ。現在は倉庫を建て直す準備を進めており、「多くの人が応援してくれている。期待に応えるためにも、一日も早く生産を再開させたい」と意気込んでいる。

国内生産 2社のみ

 大阪府河内長野市は、明治期から農家の副業としてつまようじ作りが盛んで、国内最大の産地だった。市内で「つまようじ資料室」を開いている稲葉修さん(79)によると、最盛期の1980年代は年間約700億本を生産しており、国内シェア(市場占有率)は9割を超え、世界シェアも5割に達していたという。

 その後、中国でも生産されるようになると、国内生産はピークの1%以下に落ち込み、現在、国内で流通するのは中国製品が大半を占めている。最盛期には軸が丸い一般的なようじを製造するメーカーは国内に二十数社あったが、現在は河内長野市内に「菊水産業」と「やなぎプロダクツ」の2社が残るだけとなっている。

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