「かっこいい」 社会とつながる障害者アート…デザイン性生かし商品化

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 障害者のアートを支える動きが広がっている。社会参加を促す取り組みだけでなく、その芸術性やデザインを生かした商品も増えてきた。今年は東京パラリンピックが開催されたこともあり、機運はさらに高まりつつある。(藤本幸大)

「かっこいい」

 店内に並ぶのは、カラフルなデザインのハンカチやネクタイ、傘。商品にはアーティストのプロフィルなどが添えられている。

期間限定で開店した「ヘラルボニー」の店内(京都市下京区で)
期間限定で開店した「ヘラルボニー」の店内(京都市下京区で)

 盛岡市で障害者のアートを使った商品を販売する「ヘラルボニー」が今月、京都市の藤井大丸に2か月限定で開いた関西初のショップ。契約アーティストは全国で150人を超え、商品はオンラインでも展開する。「ベースにあるのはアートとしての素晴らしさ。チャリティーではなく、実際に『かわいい』『かっこいい』ものをそろえた」(中塚美佑・広報担当)という。

母・珠美さん(左)に見守られて作品に取り組む衣笠さん。明るい色彩の風景画、静物画などで国内外から評価を受ける(京都市中京区で)=河村道浩撮影
母・珠美さん(左)に見守られて作品に取り組む衣笠さん。明るい色彩の風景画、静物画などで国内外から評価を受ける(京都市中京区で)=河村道浩撮影

 自閉症がある京都市の衣笠泰介さん(32)は、同社の依頼でハンカチやストールに自作のデザインを提供した。18歳で地元の画廊に見いだされ、今や国内外で個展を開く人気だが、母の珠美さん(61)は「泰介は絵を描けることが幸せ。やりがいや新たなチャレンジにもつながっている」と話す。

企業と協力

 障害者の創作は従来、福祉施設の療育として行われてきたが、2000年代以降は滋賀、広島などで福祉関係団体が専門美術館を開設し、展示の場が広がった。後押ししたのが障害者の優れた作品を含む芸術「アール・ブリュット」の流行だ。近年は企業の協力でデザインを商品化し、消費者とつなぐ動きが進む。

 愛媛県で就労支援事業所を営むNPO法人「インクルーシヴ・ジャパン」は今年、クラウドファンディングで資金を募り、凸版印刷(東京)と作品を生かしたエコバッグ作りを始めた。事業所には発達障害者、精神障害者ら約50人が制作のために通い、作品は会員制のカフェでも展示。担当者は「社会に心を開くきっかけになれば」と語る。

 三つのNPOが共同運営する奈良市の「エイブルアート・カンパニー」も、公募したアーティストと様々なメーカーをマッチングし、日本酒ラベルやTシャツなどを手がけてきた。アーティストには対価を支払い、自立支援につなげる試みだ。

行政も後押し

 18年の「障害者文化芸術活動推進法」施行以来、国や自治体も展示への助成事業や環境整備を進める。兵庫県立美術館王子分館・原田の森ギャラリー(神戸市)は昨年、障害者の作品の常設展示スペースを設け、これまでに作品展を5回開いた。公立美術館では珍しい試みという。

 服部正・甲南大教授(芸術学)は「様々な形で障害者の作品が社会に届きやすくなったのは、近年の成果と言える。今後さらに共生社会の実現につなげるには、障害の有無にかかわらず、アートを創造、鑑賞できる環境が必要。行政はそのためのバックアップをしていくことが欠かせない」と話している。

アール・ブリュット  美術の専門教育を受けない人たちが、自身の衝動のままに表現した芸術作品のことで「アウトサイダー・アート」とも呼ばれる。フランスの画家デュビュッフェが提唱し、1990年代以降、日本に広まった。近年は自閉症の陶芸作家・沢田真一さんら、国際的に活躍する日本人アーティストもいる。

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