陸上自衛隊、月内にも実弾射撃訓練再開へ 場外着弾した滋賀の演習場で

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 陸上自衛隊は31日にも、滋賀県高島市の 饗庭野あいばの 演習場で7か月ぶりに実弾射撃訓練を再開する。迫撃砲弾が場外に着弾する事故があった昨年6月から中止していたが、迫撃砲に安全ストッパーを装着し、飛距離の出る砲弾を訓練現場に持ち込まない条件で、市が了承した。同演習場では6年間で4件の事故が起きているだけに住民らの不信感は根強く、より実践的な訓練には時間がかかりそうだ。(辻井花歩、松久高広)

持ち込ませず

 昨年6月23日、訓練のために高知県から来ていた第50普通科連隊が発射した120ミリ迫撃砲の砲弾1発が約2・5キロ先の目標地点を越え、演習場との境界から約1キロ先の山林に着弾した。けが人はいなかった。

 120ミリ迫撃砲は侵攻してくる敵の撃破を目的とした火器で、有効射程は約8キロ。砲弾にはリング状の火薬が複数ついており、一部を外すことで飛距離を調整する。訓練現場でフル 装填そうてん した砲弾の火薬量を調整するのが一般的だが、事故では隊員が確認を怠り、フル装填のまま発射された。

 陸自は昨年12月、再発防止策を公表。第三者的に装備の安全点検を行う監督者を置き、迫撃砲の本体に方向や角度を制限する安全ストッパーを装着することに加え、市の強い求めで、場外まで飛ぶ恐れのある量の火薬を装填した砲弾を訓練現場に持ち込まないことも盛り込んだ。

 関係者によると、陸自は当初、現場で飛距離を調整するのも訓練の一環だとして難色を示したが、最終的には受け入れたという。

機会減「大きな問題」

 陸自が、訓練の一部の実施を見送ってでも再開を急いだ背景には、饗庭野演習場の重要性がある。

 同演習場は2200ヘクタールで、北海道の矢臼別演習場(1万6800ヘクタール)や静岡県の東富士演習場(8800ヘクタール)ほどの広さはないが、近畿、中四国など2府19県を管轄する中部方面総監部で唯一、破壊力のある実弾の射撃訓練ができる。

 同総監部の部隊は事故以降、他の総監部の演習場で訓練していたが、移動費用の負担が大きく、頻度は落ちていた。

 元陸自北部方面総監の志方俊之さんは「中国と台湾の緊張関係が有事に発展した場合、陸自の部隊が南方に展開する可能性もあり、訓練の機会が減るのは大きな問題だ」と指摘する。

6年で事故4件 住民は根強い不信感

 饗庭野演習場の東側は市街地と隣接し、南約1キロには集落があり、射撃訓練中は屋内にも砲弾の音が響き渡る。すぐそばを通る3本の国道は住民の生活道だ。

 陸自は、今回の事故の再発防止策を公表した当日に住民説明会を開いた。訓練を進める上で、住民の理解が不可欠だからだ。住民からは訓練内容への質問に加え、「説明が遅いのでは」との声も出たという。

砲弾が着弾した山林を調べる陸自隊員(昨年6月23日、滋賀県高島市で)
砲弾が着弾した山林を調べる陸自隊員(昨年6月23日、滋賀県高島市で)

 同演習場では2015年に重機関銃の流れ弾が民家の屋根を貫通するなど、6年間で4件の事故が発生。近くの男性(74)は「事故のたびに再発防止策を講じたはずなのに、人為的ミスがなくならない。また起こるのではないか」と話した。

 元海将で、金沢工業大虎ノ門大学院の伊藤俊幸教授は「訓練していること自体が安全保障上の抑止力になるが、相次ぐ事故は部隊の練度が低いと示しているようなものだ。自衛隊は市民の支えがあって初めて存在できるとの原点を改めて認識し、再発防止策を徹底すべきだ」とする。

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