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育児と介護を同時に担うダブルケアの支援に取り組む全国の約30団体が、今年初めて2月2日を「ダブルケアの日」として、各地でイベントを展開する。晩婚・晩産化や少子高齢化によるケアの担い手不足を背景に、直面する人は今後さらに増えるとみられ、経験者らは「孤立しないよう支援の輪を広げたい」と呼びかけている。(島香奈恵)
ダブルケアを行う人は、内閣府の2016年の推計では約25万人に上り、うち約17万人が女性。全体の8割を30~40歳代が占める。40歳以上の高齢出産の割合は増加傾向にあり、00年は1・2%だったが、20年には5・8%に増えた。
ダブルケアの日を提唱したのは、北海道と神奈川、岩手の3団体でつくる実行委員会。ケアが重なることを2(ダブル)と結びつけ、各地の団体に呼びかけた。
大阪市天王寺区のクレオ大阪中央では、経験者らでつくる「
メンバーの一人(36)は7年前、妊娠中にがんを患う父親の容体が悪化し、育児と介護が重なった。母は既に亡くなり、きょうだいもいない。自営業で多忙な夫には頼めなかった。
数時間おきの授乳、オムツ替えに夜泣き。寝不足が続く中、家事と父親の世話に追われ、母乳が出にくくなった。友人の多くは実家で産後を過ごしており、孤独感が募ったという。「こんな状況は自分だけ、と思い詰めていた。一人で抱え込まず、誰かに相談してほしい」と話す。
ダブルケアの問題は、仕事との両立が難しいうえ、介護、子育てといった縦割り行政のはざまで必要なサポートを得にくいことだ。ソニー生命保険の2018年の調査では、経験者の1割が離職していた。
実行委員長の野嶋成美さん(59)(札幌市)は「2月を月間として集中的にイベントを開催し、理解を広げたい」と話している。
ダブルケアに詳しいカナダ・トロント大社会学部の相馬直子客員教授の話「晩産化や少子高齢化の傾向は今後も続き、ダブルケアはより身近な問題になるだろう。国や自治体は包括的な相談窓口を設け、企業も両立支援制度を見直すべきだ。孤立した家庭で育った子どもがヤングケアラーとなる世代間連鎖を生まないため、複合的な視点を持つ家族ケアが求められる」