完了しました


機体が木材でできた「木造人工衛星」の開発に向け、京都大と住友林業の研究チームは、国際宇宙ステーション(ISS)で木材の耐久性を調べる世界初の実験に乗り出す。木材を使う最大の利点は、運用終了後に大気圏で燃えても有害なごみが出ないことで、製造コストの低下につながる可能性もあるという。
実験を進めるのは、京大特定教授で宇宙飛行士の土井隆雄さん(67)ら。
20日に米国から打ち上げられるロケットに搭載した無人補給船で、3種類の樹木(ホオノキ、ヤマザクラ、ダケカンバ)の木片(長さ56ミリ、幅8・6ミリ、厚さ5ミリ)をISSに送る。2022年12月までISS船外にさらす実験を続け、宇宙空間での温度変化や宇宙放射線などでどれだけ劣化するかなどを調べる計画だ。
アルミニウム合金などでできた衛星は、運用終了後に大気圏に突入させると、燃焼後に微細な金属粒子が生じる。増え続ければ大気汚染やロケットの機体損傷につながる恐れがあるため、「クリーン」な木材に着目した。
18年から地上で様々な木材を使って実験を重ね、真空中でも材質が安定している3種類を選んだ。宇宙空間の気圧や温度変化(マイナス20度~プラス80度)の環境を再現したところ、急激な強度の低下はなかったという。金属製の衛星と同様に宇宙環境での運用に耐え、コスト面でも安くなる可能性があるとしている。
チームは、今回の実験データを踏まえて最適な木材を選び、23年度にも約10センチ角の超小型木造衛星を打ち上げたい考えだ。土井さんは「金属粒子は数十年から数百年も漂い続ける。このまま衛星が増えれば、地球環境に影響が出る恐れがある。将来的には、大気圏に突入させる人工衛星は全て木造にするべきだ」と話す。