路線維持へ「交通税」導入も…滋賀県で検討始まる、利用者以外の負担に反発も

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 滋賀県が鉄道やバスなどの公共交通を維持する財源として、「交通税」の検討を始めた。赤字路線の沿線住民だけでなく県民全体で<足>を守ろうという狙いで、導入されれば全国初となる。路線を利用しなくても税を払う県民からは反発も予想され、実現に向けたハードルは高いが、利用者減で鉄道事業者の経営が厳しくなる中、公共交通のあり方に一石を投じそうだ。(井戸田崇志)

経営が悪化している近江鉄道(滋賀県彦根市で)
経営が悪化している近江鉄道(滋賀県彦根市で)

運行支援の財源

 交通税の議論が浮上したのは、近江鉄道(本社・滋賀県彦根市)の経営問題がきっかけだ。同社は西武鉄道が100%出資する民間企業。沿線の人口減が響き、コロナ禍前でも26年連続の営業赤字だった。県と沿線10市町は1998年度以降、毎年計約5000万円の補助金を出していた。

 コロナ禍でさらに経営は厳しくなり、2020年12月、線路や駅舎などの鉄道施設を自治体側が保有・管理し、近江鉄道は運行のみを担う「上下分離(公有民営)方式」に24年度から移行することが決まった。自治体側の負担額は未定だ。

 県内では第3セクター・信楽高原鉄道(甲賀市)やバス会社の経営も厳しく、近江鉄道と同様の問題が起こりかねない。「あらかじめ運行支援に活用する財源を確保しておく必要がある」(県幹部)と目をつけたのが交通税だ。

24年度以降視野

 三日月大造知事から諮問を受け、県税制審議会(会長・諸富徹京都大教授)は4月20日、「地域公共交通をこれまでの利用者負担の考え方で全県的に維持することは相当困難」として、交通税の導入を促す答申を行った。県は課税方法を含めた制度設計に着手し、24年度以降の導入を視野に入れる。

 県が想定するのは、県税の法人事業税や個人県民税の税率を標準税率より引き上げる「超過課税」という手法で、上乗せ分を公共交通の維持に充てる。県議会で条例案が可決されれば実現できる。県は使途を公共交通の維持に限ることで、補助金よりも財源の安定度が増すとみるほか、公共交通に対する県民の意識が高まると期待している。

 三日月知事は「これだけ負担するのだから、こういう交通になれば良いという議論に結びつく」と強調。近畿大の ひさ 隆浩教授(都市計画)は「特別な税金で支えてもらう以上、経営努力への事業者の意識も高まるのでは」と指摘する。

 ただ、ホテル利用者らから徴収する宿泊税などの「法定外目的税」とは異なり、赤字路線を利用しない県民からも徴収するため、反発も予想される。県内では京都、大阪のベッドタウン化が進む大津、草津両市などの人口が多く、久教授は「メリットを享受する人が限定される中、県民の理解をどう得るのかが課題だ」と指摘する。

 三日月知事は「皆で負担し合って公共交通を維持することは、国や民間だけに頼らない新たな自治を追求するうえで重要だ」と導入に強い意欲を示している。

乗客ピークから4割減

 

 国土交通省によると、全国の地域鉄道70社の2020年度の輸送人員は2億9000万人で、ピークの1991年度より44%減った。

 コロナ禍が利用者減に追い打ちをかけ、鉄道事業は急速に悪化した。国交省は2月、地域鉄道のあり方を議論する有識者会議を新設。自治体や鉄道事業者からヒアリングを実施しており、今夏に持続可能な交通体系の構築に向けた提言を行う予定だ。

 JR西日本は4月、乗客が極めて少ない在来線17路線30区間の区間別収支を初めて公表。全区間赤字だった。同社は全ての沿線自治体に対し、路線存続などの前提を置かずに地域公共交通のあり方を議論するよう呼びかけている。JR四国も今月、20年度の区間別収支が全8路線18区間で赤字だったと発表した。

スクラップは会員限定です

使い方
「地域」の最新記事一覧
3022056 0 ニュース 2022/05/23 06:00:00 2022/05/23 06:00:00 2022/05/23 06:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/05/20220523-OYO1I50000-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)