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新型コロナウイルス禍でオンライン授業が続いてきた大学で対面形式が復活する中、授業風景が様変わりしつつある。浸透してきたデジタルツールの活用で、対面の短所を補い、学生の満足度を高める取り組みが始まっている。
資料ネット上に

立命館大びわこ・くさつキャンパス(滋賀県草津市)で18日に開かれた「現代社会とボランティア」の授業。学生が対面でもオンラインでも受講できる「ハイフレックス型」で実施された。
この日は、大津市で学童保育を開くNPO法人の代表を招き、活動にかける思いを聞く内容。対面参加の約40人は話を聞きながら、手元のノートパソコンやスマートフォンからチャットで質問を寄せ、話が一段落したところで講師に答えてもらう。この模様は、天井に設けられたカメラで中継され、オンラインで約30人が受講した。
2年生(19)は「対面の方が先生の熱心さが伝わってきて理解が深まる。チャットなので気軽に質問できる」と歓迎する。講義を受け持つ小辻寿規准教授(36)は「オンラインでは見えにくい板書はやめ、授業用資料をインターネット上で見られるようにした。大学側が学生に寄り添う姿勢がより一層求められるようになった」と話す。
早稲田大では、情報通信関連の授業で、対面受講の学生がウェブ上の掲示板に質問を入力。他の学生の書き込みには「いいね!」ボタンを押し、教員は「いいね!」の多い質問に回答する。予習用動画も事前配信し、学生にも好評という。
利点組み合わせ
文部科学省の調査では、昨年度後期に対面授業を半分以下とした大学は全体の2割近くあった。該当する主な大学に今春の方針を取材したところ、関西学院大や同志社大などは授業の「ほとんど」(8割以上)と回答。立命大も8割まで増やすとした。
ただ、学生からは従来型の対面授業に不満の声もある。
関西大が昨年度後期に実施し、学部生3737人が回答した調査では、対面授業に「満足している」としたのは58・3%。満足度では、生中継を視聴する「リアルタイム」(48・8%)は上回ったが、ネット上に保存された授業の動画で繰り返し見られる「オンデマンド」(72・4%)を下回った。対面のメリットとして「他の受講生と交流しやすい」「臨場感がある」などが挙がる一方、「困っていること」では「一方的に講義されることが多い」「先生に質問しにくい」などの回答が目立った。
調査にあたった山田剛史教授は「大学に来て一方的な講義を聴くだけなら、感染リスクのない自宅でオンデマンドの方がいい、と合理性を求める学生は少なくない」と分析する。
コロナ禍が3年目に入り、オンライン授業が浸透した各大学ではハード面の整備が進んでおり、大学教育に詳しいリクルート進学総研の小林浩所長は「デジタルと対面の利点を組み合わせ、より高い学習効果を狙う授業が今後の主流になるだろう」とみる。