胎内被爆の苦しみ世界に伝えたい…学生50人、SNSで連携 体験記英訳しネットで公開

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胎内被爆者の体験記の英訳に取り組む貞岩さん(左)ら(兵庫県西宮市の関西学院大で)=宇那木健一撮影
胎内被爆者の体験記の英訳に取り組む貞岩さん(左)ら(兵庫県西宮市の関西学院大で)=宇那木健一撮影

 全国10大学の学生約50人が、胎内被爆者が記した体験記の英訳に取り組んでいる。広島市出身で被爆3世の関西学院大4年、貞岩しずくさん(22)が胎内被爆者の存在を世界に伝えようと呼びかけ、賛同した学生らが団体を設立。7月に完成させインターネットで公開する。貞岩さんは「生まれた時から被爆者として生きてきた人たちの思いを知ってもらい、核廃絶につなげたい」と話している。(岡大賀)

47人の思い

 貞岩さんは広島市南区で生まれ育ち、祖父は原爆による「黒い雨」を浴びた被爆者だが、体験を聞いたことはほとんどなく、「様々な葛藤があったのだろう」と振り返る。学校の平和学習では被爆者の話を何度も聞き、「死んだ人に申し訳なく、生きるのがつらかった」との言葉は今も心に残っている。

 地元の高校を卒業後、平和に関するフィールドワーク科目がある関学大に進学。英訳のきっかけは2021年2月、大学のオンライン講義で講師を務めた「原爆胎内被爆者全国連絡会」(広島市)代表世話人の二川一彦さん(76)との出会いだった。

 二川さんから同会が20年に発刊した体験記「生まれた時から被爆者」(A5判、243ページ)を紹介された。題名に衝撃を受け、47人分の思いが書かれた本に目を通した。

 <被爆した記憶がないのに、なぜ私は被爆者なのか自問自答し、ある日、気がつくと被爆者健康手帳をビリビリに破っていました>

 <いつ被爆による身体的影響が生じるか分からない恐怖と向き合わなければならない>

 病気の発症におびえたり、差別や偏見にさらされたりしながらも、核の悲惨さを訴えようとする人たちの思いに心を動かされた。

アオギリ

 大学の担当教授から体験記の英訳版がないことを聞いた。「翻訳して世界中に伝えたい」。友人らにSNSなどを通じて呼びかけると、賛同の輪が広がり、関学大のほか、国際基督教大、北海道大、早稲田大、琉球大など10大学から、平和や英語に関心がある学生ら約50人が集まった。

 貞岩さんは21年8月、学生団体「AOGIRI」を結成。名前は広島市中心部で被爆しながら再び芽を出した樹木「被爆アオギリ」にちなんだ。苗木が各地で育っている被爆樹木に自分たちを重ね、「私たちも被爆者の記憶を紡いでいく」との思いを込めた。

 コロナ禍でメンバーが集まることは難しかったが、SNSで連絡を取りながら、担当する被爆者を決めて英訳を進めた。貞岩さんは二川さんの手記を担当。より深い心情を理解するため、英訳の前に日本語の文章を何度も書き写した。メンバーらも戦争の証言集や記録を読んで知識を深めた。

 参加した国際基督教大4年玉木友貴さん(23)は「差別されないよう被爆者であることを隠した人がいたことに驚いた。核兵器は生まれてくる子の人権までも侵害することを世界中の人に知ってほしい」と語る。

 英訳版は7月中にAOGIRIのホームページなどで無料公開するほか、SNSでも発信していく。

 来年5月には先進7か国首脳会議(G7サミット)が地元の広島で初開催される予定で、貞岩さんは「各国に向けて胎内被爆者の思い、そして原爆がいかに人間の心をむしばむものかを伝え、核のない世界に一歩でも近づければ」と願っている。

胎内被爆者  被爆した母親の胎内にいて、広島では1946年5月31日まで、長崎では同6月3日までに生まれた人が認定される。厚生労働省によると昨年3月末現在で全国に6774人おり、被爆者全体の5%。放射線を浴びた影響で生まれつき身体や知能に障害を持つ人もいる。

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