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「自分の弱みを安心してはき出せる場でありたい」と優しく語る佐々木さん(高知市で)
「自分の弱みを安心してはき出せる場でありたい」と優しく語る佐々木さん(高知市で)

◇高知南署少年育成指導官 佐々木美紀さん48

 少年非行率が全国でも高いとされる高知県で、非行少年の補導や、家族からの相談などに22年間、携わってきた。子どもたちに寄り添う「伴走者」として、心のSOSに耳を傾け続けている。

■きっかけ

 「あなたは補導員に向いている。いつもニコニコしゆうき」。佐川署に電話交換手として勤務していた1994年、少年補導を担当していた女性職員からの言葉が転機になった。それまで子どもに関わる仕事に就くことは考えたことがなかったが、地域の祭りなどで補導の見回りに同行した際、帰宅するよう呼びかけながらも子どもたちとたわいのない話をする補導員の姿に「面白そう」と感じていた。

 96年4月から高知南署で少年補導職員となったが、最初は子どもたちにどのように声をかけていいかが分からなかった。「犯罪はいけない」と説明するだけでは何の解決にもならず、注意をした子どもが再び非行をしたと聞いた時には、実力のなさを思い知った。

 「このままではダメだ」。各地の署に異動し、30歳代半ばになったある日、改めてカウンセリングの勉強をすると決め、各地で開かれている研修や勉強会に足を運び始めた。そこで学んだのは、カウンセリングとはその人の全てを聞くということ。「こちらが真っ白な気持ちで話を聞かないといけない」と、自身の心の整理の時間を作り、純粋な気持ちで子どもたちと向き合おうと努めるようになった。

■親子と向き合う

 10年ほど前、万引きを繰り返してしまう男子中学生に出会った。多い時には週1回、商品を盗むこともあり、その度に母親が店に謝りに行く。「子どもを連れて死にたい」。最初の面接に訪れた母親は疲れ果てていた。

 「よく頑張ってきたね」「いつでも相談してね」。母親を励ましながら、じっくりと話を聞き続けた。1年以上にわたって面接を続ける中で、一緒に買い物に行くなど親子でルールを作った。徐々に前向きさを取り戻す母親の姿を目にしてか、男子中学生も衝動を抑えようと、少しずつ改善の兆しを見せ始めた。

 別の警察署に転勤していた数年後、街で偶然出会った母親は「息子が仕事を始めた」とうれしそうに話してくれた。「役に立てたのかな」と実感がわいた。

■身近な大人のモデルに

 少年たちは「どうせ僕なんて」「どうせ私なんて」とよく口にする。家庭環境が良くなかったり、周囲の大人に認められていなかったりといった劣等感から、自己肯定感の低さが顕著だという。「周囲の大人が子どものために時間を割いて何かをしてくれることが、非行防止につながる」。面接では親の同席も求め、子どもだけでなく親の話も聞くことが再非行防止の鍵になるという。

 「大人になることはすてきなことなんだと子どもたちに信じてもらえるように、これからも身近な大人のモデルでありたい」。子どもや親たちとの「二人三脚」はこれからも続いていく。

◆取材後記 心の整理時間を作る

 「自分の時間をしっかり持つことで、心の整理をすることが大切なんです」。純粋な気持ちで子どもの話を聞くコツを尋ねると、佐々木さんはそう答えた。

 趣味はロードバイク。自転車愛好家たちでつくるグループにも所属し、週末になると夫や友人と一緒に車に自転車を積み込み、四万十川沿いなどを走ったり、県内のイベントに参加したりしているという。「体を動かすと、ストレス発散になる。高知は自然が多くて楽しい」と魅力を語る。

 「今の子どもたちは、失敗を恐れて弱みを見せない。安心してはき出せる場所がなければストレスもたまる」と佐々木さんは言う。地域の中での人付き合いが少なくなった現代社会の子どもたちに必要なのは、佐々木さんのように「いいですねえ」などと相づちを打ちながら、まっすぐ受け止めてくれる周囲の大人の存在なのだと感じた。(吉田清均)

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23085 0 人あり 2018/05/24 05:00:00 2018/05/24 05:00:00 「自分の弱みを安心してはき出せる場でありたい」と優しく笑う佐々木さん(高知市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180523-OYTAI50018-T.jpg?type=thumbnail

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