歌で心に寄り添う

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東日本大震災の被災地支援など音楽を通じて様々な活動を続ける堀江さん(高知市で)
東日本大震災の被災地支援など音楽を通じて様々な活動を続ける堀江さん(高知市で)

 ◇高知市在住のジャズシンガー 堀江真美さん 61

 「投げたお手玉の放物線を追いかけるように声を出して」――。高知市内のチャペルで開催しているレッスンで、生徒一人一人に声をかける。生徒たちがお手玉を遠くに投げて発声を繰り返すと、次第に声が伸びるようになる。

 「音楽には、遠心力や浮力、集中力、想像力、観察力、分析力、理解力などが必要。様々なトレーニングでそうした力を高めていくと、あらゆるキーで、あらゆるテンポで歌えるようになるんです」と力を込める。

 高知市内で生まれ、幼い頃から父親が好きだったジャズのレコードを聴きながら歌った。高校生になると独学でピアノを練習。市内のライブハウスで、県警音楽隊を指導するなど実力があったクラリネット奏者から、アドリブの組み立て方やメロディーの作り方などを学んだ。

 20歳の頃に上京し、六本木のジャズクラブなどで歌唱力を磨いた。ある芸能事務所から声がかかり、日本を代表するシンガー・ソングライター山下達郎さん書き下ろしの作品を歌うことが決まった。専属のマネジャーが付き、海外旅行も用意してくれた。

 でも「何かが違う」と感じた。敷かれたレールを走り、調子に乗っている自分が見えた。「音楽を勉強するために上京したはずなのに」。同じ頃、本場のジャズオーケストラでボーカルを務めていた佐藤マサノリさんと出会い、自分の力のなさを実感した。「目が覚め、レコードを出す前に事務所を辞めちゃいました」

 その後、佐藤さんらに基本を学び、作曲家で知られる三木たかしさんとラジオの音楽番組を約5年間担当した。秋川雅史さんのヒット曲「千の風になって」のピアノアレンジを作るなど編曲家としても活躍する。

 2011年3月の東日本大震災から2か月後、知人から誘われ、福島県の音楽イベントに参加した。戦後復興期によく歌われたという「おぼろ月夜」などを歌うと、被災者から「心に染みる」と反響があった。その夏、津波で多くの児童が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小の保護者からの依頼で、遺族が書いたとみられる手紙に曲をつけ、地元の「灯籠流し」の行事で披露した。

 被災者に寄り添うことができたのも、自分が12歳の時に亡くなった父の「人の優しさや慈悲を学びなさい」という遺言を大切にして生きてきたから。父の言葉を胸に、福島県内の老人ホームの慰問などを続ける。

 5年前から拠点を古里の高知市に移し、東京と行き来しながらライブや音楽指導にあたっている。

伝統のあるビッグバンド「森寿男&ブルーコーツオーケストラ」の伴奏でペギー葉山さんの追悼歌を熱唱する堀江さん(2017年10月、横浜市で)=堀江さん提供
伝統のあるビッグバンド「森寿男&ブルーコーツオーケストラ」の伴奏でペギー葉山さんの追悼歌を熱唱する堀江さん(2017年10月、横浜市で)=堀江さん提供

 17年10月に横浜市で開かれたジャズフェスティバルに参加する際、知人から同年4月に亡くなった歌手・ペギー葉山さんを追悼しよう、と声がかかった。ペギーさんのマネジャーだった女性に音楽に対する姿勢を評価され、「あなたはペギーがやりたかったことをやっているわ」と言われたという。

 後日、「南国土佐を後にして」など、ペギーさんが使っていたオーケストラ用の楽譜などが入った段ボール箱3箱分の遺品を譲り受けた。「楽譜にはペギーさんの魂が宿っている。機会があればこの楽譜を持って全国を回りたい」

 音楽をこよなく愛し、様々な人々と出会い、自分を磨いてきた。今日もどこかで心に届く歌声を響かせている。(小野温久)

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57417 0 人あり 2019/01/20 05:00:00 2019/01/21 13:36:39 東日本大震災の被災地支援など音楽を通じて様々な活動を続ける堀江さん(高知市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190119-OYTAI50000-T.jpg?type=thumbnail

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