南国市 なん「こく」と読む?
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誤読の「ごく」 俗称化
熟語には2通りの読みを持つものがある。ただ国語辞典で隣り合うほど似ているケースは珍しい。その一つが「南国」だ。一般には「なんごく」だが、南国市は「なんこく」と読む。県外の人はまず読めないだろう。地元ではどうか。(福田友紀子)
市役所近くで聞いてみた。市民歴50年の女性(77)は「『なんごく』と思っていた。他の人もそうでしょう」。別の男性(79)は「正しいのは『なんこく』なのかな。でもそう言ってる人、聞かんぜよ」。
南国市は1959年、後免町、香長村、岡豊村など5町村の合併でできた。市史によると、温暖な気候に加え、おおらかで明るい住民の気性を受けて、名付けられたという。
ではなぜこの読みになったのか。「南の
すでに決まったものは仕方ない。さらにどれほど浸透しているか探ってみた。
高知自動車道の南国サービスエリアに寄ると表記が「NANGOKU」だった。驚いてネクスコ西日本に聞くと「サービスエリア(SA)は名の通った方を選びます。『南国土佐』は知名度が高いですよね」。誤読ではなかった。その証拠に「インターチェンジ(IC)は市町村名に従う」との基準に沿い、南国ICは「なんこく」としている。
平山耕三市長が社長を務める「道の駅南国」。さすがに道路案内標識に「Nankoku」とあった。ただホームページを見ると著作権表記が「Nangoku」に。やんわり担当者に問い合わせてみると「間違いでした。直します」と恐縮していた。もちろん悪気はないのだ。紛らわしい読みが恨めしい。
企業もそれぞれ。四国銀行は南国支店を「なんごく」と読ませる。「後免支店」からの変更は市ができた翌年だが、広報担当者は「想像の域を出ないが、地元で『なんごく』が浸透していたからでは」と話す。
心がもやもやする。ほっとしたのは地元「ナンコクスーパー」だ。全店舗で「NANKOKU」の看板を掲げ、正しい読みに一役買っている。鎌倉利夫専務は「業者に『ナンゴク』と呼ばれるたび『うちはナンコクや』と言っています」。
市に近い人の感じ方はどうか。土居恒夫市議は2018年12月、市議会で「ややこしさを逆手にとってPRしよう」と提案していた。ちょうどこの頃、読み方の難しい大阪府
土居市議は「人口では県第2の自治体。同様の調査や企画で全国の注目を浴びなければ」と力を込める。
まだ市に動く気配はない。ただ名前の誤読は思った以上に人を傷つけるものだ。たとえ市民がおおらかでも周りはよくよく気をつけたい。