交通事故撲滅訴え続ける 声帯切除の父

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怜志さんの命日を前に、事故現場で手を合わせる高浜さん
怜志さんの命日を前に、事故現場で手を合わせる高浜さん

 声を失っても、交通事故撲滅を訴え続けたい――。バイク事故で長男を失った悲しみから、交通死亡事故を減らそうと講演を続けてきた菊池市七城町の元小学校校長高浜伸一さん(64)が今春、咽頭がんで声帯を切除した。体験を語る活動はできなくなったが、命日を前に、「ハンドルを握る以上、命を奪う危険があることを心にとどめて運転して」と電動の人工咽頭を通して訴える。

 2004年12月1日、熊本大教育学部に在学していた長男の怜志さとしさん(当時19歳)が、バイクで通学中、西合志町(現・合志市)の県道でトラックと衝突し、帰らぬ人となった。

 待望の男の子だった。名前には、物事を冷静に見つめ、目標を持って歩んでほしいとの願いを込めた。高校3年の秋、高浜さんが勤務する学校の校舎のペンキ塗りを黙々と手伝ってくれた姿が今も忘れられない。

 教壇に立ち、子どもたちに何を残せてきたのか自信はなかったが、父親の背中を追うことを決めた怜志さんは「おやじは十分頑張ってきたと思う」と言ってくれた。

 突然訪れた息子のいない日々。教師の夢を絶たれた怜志さんの無念を思うと、仕事は当然手に着かず、人に会うことも苦痛に感じられた。

 「怜志のことを語れば、19年間生きた意味を残せるのではないか」

 同じような交通事故遺族を出さないためにも、自らの心の痛みや悲しみを語る講演活動を始めた。多いときで年間70回、演壇に立った。約10年前に食道がんを患い、この春、咽頭がんの手術で声を失った。それでも悲観はしていない。「生きていることの素晴らしさ」を怜志さんが命をかけて教えてくれたからだ。

 11月の第3日曜日は、05年に国連が決議した「世界道路交通犠牲者の日」だ。高齢者の暴走事故やあおり運転など道路の危険は増しており、これから年末にかけて死亡事故は増える。

 講演はできなくなったが、今年の怜志さんの命日にはこう報告するつもりだ。「自分や家族が突然事故に遭ったときのことを考えることが事故を防ぐ第一歩。怜志のような被害者を生まない社会を作るため、これまでの体験を本にまとめるよ」

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907319 0 ニュース 2019/11/20 05:00:00 2019/11/20 05:00:00 2019/11/20 05:00:00 怜志さんの命日を前に、亡くなった事故現場で手を合わせる高浜さん https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191119-OYTNI50029-T.jpg?type=thumbnail

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