女性歌劇団 高森で結成 来春初演 稽古に汗
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歌劇団の舞台に立つことを夢見る18~32歳の女性22人が今月、高森町に移り住んだ。東京の漫画出版社が結成した「
■自然の中で感性磨く
高森町の旧温泉施設に整備中の「アーティストビレッジ」のレッスン場。今月27日、団員たちが、真剣な表情でダンスレッスンをしていた。
回を重ねるごとに動きが合っていくが、女性講師は「これが限界?」と指摘。団員たちは「頑張ります」と声をそろえた。
ミュージカル経験がある産山村出身の片山紗雪さん(25)は「みんなの頑張りが刺激になる。阿蘇の大自然の中で感性を磨き、自分の表現につなげたい」と語る。
団員たちは休憩時間も仲間同士で動きを確認。自主的に居残り練習する姿もあった。
団員は、全国オーディションで116人の中から選ばれた。役者志望以外に元自衛官など多彩な顔ぶれだ。
■ライブへのこだわり
歌劇団を設立したのは、県内出身の堀江信彦さんが社長を務める「コアミックス」。堀江さんは、集英社で週刊少年ジャンプ編集長を務めるなど、多くの人気漫画を世に送り出した。
劇団名「096k」は、県内の市外局番の冒頭3桁096に、歌劇団の「k」を加えた。オクロックは英語で、「時」の意味があり、若者たちが夢の時を刻むようにとの思いを込めた。
「インターネット上に作品が豊富にある現代だからこそ、『ライブ(生)』が価値を持つ。熊本から世界中を笑顔にする歌劇団を目指したい」。堀江さんはそう力を込める。
初演は来年3月を予定。堀江さんと漫画家原哲夫さん原作の漫画「前田慶次 かぶき旅」を舞台化し、熊本城近くの観光施設「熊本城ミュージアム わくわく座」で定期公演を行う。
■若い団員たちに期待
町内の寮で共同生活する団員たち。食事などは用意され、舞台稽古に専念できる環境が整えられている。レッスンも、ダンス、基礎体力づくり、殺陣、発声指導に一流の講師陣が顔をそろえている。
大阪市のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」で、5年間ショーに出演した谷口亜湖さん(24)は、新型コロナウイルスの影響で出番が減り、新天地を求めた。「芝居のことだけを毎日考えられる環境があって幸せ。096kを多くの人に知ってほしい」と力を込める。
町も若き団員たちに期待している。22人は、新たに今年度設けた「パートタイム任用職員」として採用され、町営ケーブルテレビに定期的に出演するほか、動画投稿サイト「ユーチューブ」で観光情報を発信する。
22~24日、町とコアミックスによる海外の漫画家志望者向けのイベントがリモートで行われた。団員は、司会進行を務めたほか、高森湧水トンネル公園などでロケした映像を流した。
町政策推進課は「団員は、町外の出身者ばかりだが、意欲に満ちている。若い視点で町を盛り上げてほしい」と期待している。
<編集後記>
屋外での体力づくりに、発声練習――。高森町の豊かな自然環境は、役者を目指すのに適していると感じた。
来春から始まる公演で、団員は戦国武将を演じる。土の香りがして馬も身近にいる町で、役のイメージも膨らみそうだ。
「高森を阿蘇で最も人が来る場所にしたい」。団員の一人はそう話した。歌劇団がどう成長していくか、今後が楽しみだ。