女性の「しんどさ」共感

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◇「日本のヤバい女の子」刊行 はらだ有彩さん 32

自筆のイラストを背景に、著書について講演するはらださん(大阪市で)
自筆のイラストを背景に、著書について講演するはらださん(大阪市で)

 人々から恐れられる皿屋敷のお菊に「生前の人格まで忘れ去られるのは悲しい」と心を寄せたり、玉手箱を渡したのは「一緒に過ごした時間を浪費と思わないでほしいから」と乙姫の本音を代弁してみたり――。民話や怪談でなじみ深い女性が登場するイラストエッセー「日本のヤバい女の子」で、時を超えて彼女たちの無念や痛みに思いをはせ、友人のように寄り添う。「悪女や脅威として描かれる女の子たちにも、違う感情や生き様があったんじゃないか」。関西弁のつっこみも織り交ぜたユーモアあふれるエッセーは幅広い世代の反響を呼び、版を重ねている。

 約160年続くせんべい店で生まれ、中学、高校を女子校で過ごした。デザインを学ぼうと、京都市立芸大では壁画を専攻した。広告会社に就職し、社会人になると、女性として初めて出会う違和感と衝撃があった。出張先で同行した男性にぶしつけに部屋に呼ばれたり、取引先や同僚が事あるごとに「女性なんだから」と口にしたり。その場でやり過ごしていても、どうやら世の女性たちも同じような経験をたくさんしているようだった。「これって変じゃない」「誰も変って言わないのは、私が変だからか」。しんどい、という感情を積もらせる一方、「3年は続けなければ何もわからない」と言い聞かせながら仕事を続けた。

 昔話に興味を持ったのは、そんな頃。「2010年代になっても、女子はこんなに生きづらい。それなら昔の女の子ってめっちゃしんどかったんちゃうか」。地方の伝承や論文などを調べ始めると、想像が膨らんでいった。

 結果的に入社3年で退職し、別の会社に転職後の28歳で昔話の女性をモチーフに絵画やスカーフなどの制作に取りかかった。「魅力的な彼女たちのことを何か形に残したい」との思いからだった。作品を展示したギャラリーで来場者と語り合うと、「自分も同じような経験をしている」と共感の声が返ってきた。しばらくすると、ウェブマガジンの編集者から、インターネットでエッセーの寄稿を持ちかけられた。

 15年2月から始まった連載の約2年半分をまとめたエッセーは、かぐや姫や女盗人、思いを寄せた僧を焼き殺す「安珍・清姫伝説」の清姫ら物語の女性20人の「友人」とのガールズトークをつづったというスタイル。タイトルには、悪女や脅威のような「ヤバい女」として描かれてきた彼女たちが、物語が課した重荷や役割から解放されてほしいとの思いを込めた。芸大出身の腕を生かし、カラフルな挿絵や表紙も手がけた。

 巻頭に登場するのは、千本釈迦堂大報恩寺(上京区)のおかめ伝説。約800年前、本堂の工事を任された夫が、木を切り間違って追い詰められ、妻・おかめの機転で救われたという話だ。「妻に救われたと知られれば、夫の名誉が傷つく」と、おかめは自ら命を絶ってしまうが、「時代の制約や彼女の願いからだったとしても、友人としてどこかへ連れだしたかった」と嘆く。

 全編に通じるのは、当時の風習や価値観で弱い立場に置かれたり、不条理な存在とされたりした女性たちへの優しいまなざしだ。時には女心に無理解な男たちに、「なめてんのか」と率直に怒りをぶつける。読み進めるうちに、読者は自分の経験と重ね、物語の女性や作者と心を通わせているように感じられる。

 「読者が彼女たちと手を取り合って励まし合い、元気になる時間になればうれしい。そうして乗り越えた先に、今の私たちが幸福な昔話になる日が来るといい」。物語の主人公がヤバい行動をとった理由には、現代の私たちが抱えている生きづらさも重なる。今日も、会社帰りの純喫茶で、彼女たちを現代に連れ出す。(山本美菜子)

 

 ◆はらだ・ありさ 兵庫県出身。会社員の傍ら2014年、日本の民話に出てくる女性をモチーフにしたファッションブランド「mon.you.moyo」を設立し、スカーフなどのデザイン、販売を行っている。複数のウェブサイトでエッセーを連載中。

44766 0 きょう・人・十色 2018/10/15 05:00:00 2018/10/15 05:00:00 著書について講演する原田さん(大阪市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181014-OYTAI50001-T.jpg?type=thumbnail

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