文字サイズ

    「見える」数式 楽しく理解

    ◇同志社中で数学博物館を作った数学教諭 園田毅さん 52

    • 生徒にパズルで数学の楽しさを伝える園田さん(左京区の同志社中で)
      生徒にパズルで数学の楽しさを伝える園田さん(左京区の同志社中で)

     中学校や高校にあるものとしては国内唯一の数学博物館を、2016年5月にオープンした。

     「図示すると意味がわかりやすい」と、長方形で因数分解を説明するパズルや、遊びながら2進法を理解できる「誕生日当て」ゲーム、2の36乗までの数を絵や実物で示した展示、書籍など約3000点の資料が並ぶ。

     校舎の空きスペースに設置してあり、生徒は休み時間や放課後など好きな時に来て、思い思いに数字や数学に親しめる。生徒たちは「2の29乗はカンブリア紀の約5億5千万(年前)。ぱっと目に浮かぶ」と、楽しげだ。

     大学卒業後、電気工事会社に就職した。回路設計に携わっているうちに、中高生時代に得意だった数学の「面白さに再び目覚めた」。元々教員を目指していたこともあり、一念発起して中学の教員免許を取得、1993年、同志社中で数学教員の職を得た。

     最初は教科書通りに教えたが、生徒は受け身で、「数式が表す意味や面白さは伝えきれなかった」という。

     「楽しみながら数学への理解を深めてほしい」と、教師向け勉強会で授業法を学んでいった。旅行で訪れた台湾で、教室四つ分ほどのフロア一面に蝶(ちょう)など4万匹の標本と説明を展示する高校に出会い、「学校に博物館があるなんて生徒は楽しいだろうな」と感銘を受けた。数学でも同じことができると思い、同僚らが買った数学の本や自作したピタゴラスの定理パズルなどを空きスペースに置き、少しずつ博物館として整えていった。

     開館から2年が過ぎ、生徒たちの数学に対する姿勢が積極的になったと感じる。博物館は年5~6回、土曜日に外部にも公開し、「学校で数学嫌いになった人にもう一度楽しさを伝えたい」と小学生や大人向けにパズルなどを使った授業もする。参加者からは「初めて因数分解を理解した」などと好評だ。

     最近は、大学の研究室訪問にも力を入れている。7月に訪れた素粒子観測施設「スーパーカミオカンデ」(岐阜県)では、生徒は顔を輝かせながら、研究者の説明に聞き入っていたという。「研究室や実験現場からは、好きだからやっているというオーラが出ている。それに反応して自分もやろうという生徒が出てくるかもしれない」と、期待する。

     国際的な数学力の調査では日本の児童・生徒は基礎学力は高いが、学習意欲は低いとされ、どう対処するかは多くの教育者の悩みだ。「暗記ではなく、自分で原理を調べると意欲が出てくる。博物館は子どもたちの興味を引き出す」と、仕事の合間に、各地の勉強会に顔を出し、その効能を説いている。(古川恭一)

     

     ◆そのだ・つよし 1965年、富山県滑川市生まれ。91年、京大工学部卒。93年同志社中学教諭、2010年から5年間、同校教頭を務めた。数学雑誌を中心に、授業の手法や教材などに関する著作を多数発表する。博物館の次回の一般公開は、10月20日午後2~4時を予定している。

    2018年10月16日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP

    理想の新築一戸建て