伝統文化で外国人誘客

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◇JARTA事務局長 田村啓さん 42

「持続可能な観光地づくりに取り組む」と決意を語る田村さん(中京区で)
「持続可能な観光地づくりに取り組む」と決意を語る田村さん(中京区で)

 京町家が次々と姿を消す。老舗商店街の品ぞろえが、観光客向けの商品ばかりに変わっていく。絶好調とも言われる京都の観光産業だが、一方で「古都の風情が失われている面もある」と複雑な思いを抱いていた。

 観光客も住民も満足できるまちづくりを――。そんな思いを持った観光関係者と今年5月、一般社団法人「持続可能な観光を実践する『責任ある旅行会社アライアンス』(JARTA)」を設立。旗振り役となる事務局長に就き、「京都や日本の良さを残していくためにも、取り組みを広げていきたい」と意気込む。

 ある年は、絵が飛び出す絵本。別の年はアメリカンフットボールの革のボール。父親が海外出張で買ってくる土産物はいつも目に新しく、心が躍った。大学卒業後、「世界を知りたい」と、リュック一つで海外へ。約2年間、アジア、中東、東欧、アフリカなどを巡り、南米コロンビアの大学にも入学した。ユニークな経歴を買われ、日本の水産関係の商社に入社し、メキシコで仕事に打ち込んだ。

 世界の厳しさも知った。入社から約2年後、リーマン・ショックで事業が立ちゆかなくなり、日本に帰国。2009年から3年間、府の外国人観光客誘致の事業に携わった後、メキシコに再び渡ったが、13年に京都へ戻り、会社を後にした。

 それでも世界とのつながりを絶つことはなかった。友禅型彫り職人の海外展開を手伝い、海外に魅力を発信し続けた。「地域に残る伝統が、外国人観光客を呼び込む魅力になり、活性化にもつながる」と考えたためだ。

 昨年2月には、旅行会社「チェルカトラベル」(中京区)と協力して外国からの誘客専門部署「TABIKYO JAPAN」を設立。京都だけではなく、紀伊半島の熊野古道など、日本の伝統文化を体験できるツアーを提案している。

 観光地の許容量を超える観光客が訪れるオーバーツーリズムや観光公害は、いまや世界的な問題だ。長年受け継がれてきたその土地の良さがなくなり、寂れた観光地も少なくない。魅力的な観光地であり続けるため、欧州では観光会社がバスの団体旅行の二酸化炭素排出量削減に取り組む。観光客のゴミ処理費を負担する動きも出ている。

 観光地としての持続性が問われているのは、国内の各地も同じだ。「これからの日本にとって観光とは、外国に行くだけでなく、外国人を受け入れることも意味する」と強調する。現在、国内7社が加盟するJARTAでは今後、各地で勉強会を計画。旅行会社や飲食・土産物販売、自治体など様々な業界と連携し、業務上のゴミや電力使用量の削減に取り組んだり、世界の先進事例を学ぶ勉強会を開いたりする考えだ。

 海外各地を渡り歩いたことで、見える一面もある。「地域と訪日外国人をつなぐためには、高級ホテルをはじめ、日本に少ない施設を整備することも大事。だが、日本でしか体験できない文化や伝統を残していくことも同じくらい大事だ」。世界との距離が縮まっても、その土地で育まれてきたものにこそ価値がある。そう信じて、この道を歩んでいく。

(上杉洋司)

 

 ◆たむら・けい 1976年、京都市生まれ。岡山大法学部卒。弁護士を志した時期もあったが、3回までと決めた司法試験が不合格に終わり、観光の世界へ飛び込んだ。伝統文化など観光資源を活用した地域活性化を目指し、2016年4月からは内閣府の「クールジャパン地域プロデューサー」も務める。

51962 0 きょう・人・十色 2018/12/03 05:00:00 2018/12/03 05:00:00 「持続可能な観光地づくりに取り組む」と話すJARTA事務局長の田村さん(中京区で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181202-OYTAI50003-T.jpg?type=thumbnail

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