<2>文化触れ「体の教養」を

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

「文化は見るだけじゃなく、体得することが大切」と語る千さん(上京区で)=金沢修撮影
「文化は見るだけじゃなく、体得することが大切」と語る千さん(上京区で)=金沢修撮影

 ◇茶道裏千家前家元 千玄室さん95

 ◇お茶や謡 省庁移転契機に

 茶道裏千家前家元の千玄室さん(95)は、文化庁を京都に誘致する活動に関わった一人だ。地元の願いが実を結び、文化庁は2021年度までに京都に移転することが決まった。大正、昭和、平成と三つの時代を生きてきた千さんに、移転の意義や茶道に込める思いを語ってもらった。

 1968年に文化庁ができた時、初代長官の今日出海こんひでみさんと2人で文化行政についてよく議論しました。あれからもう50年になるのですね。当時が懐かしい。

 知事や京都市長から頼まれ、文化庁京都誘致協議会の顧問を引き受けたのは3年前です。最初はなかなか難しい問題でしたが、安倍首相や文化庁の職員と何度も話し合いました。

 〈政府は2016年3月、文化庁を京都に移転する方針を決定した。長官を始め職員の約7割(250人)が東京から移る〉

 文化庁が来てくれるのは大変ありがたいのですが、役所が来るだけで喜んでいてはいけない。そもそも京都はずっと、文化庁の役割を果たしてきたのです。京都御所を中心に発達した有職ゆうそく文化、社寺文化、茶道文化の三つが混然一体となって、京都の文化の柱になっている。

 でも、京都の政財界の人たちの中で、一体何人がお茶をたて、歌を詠むことができますか。京都の政財界のトップが集まった時に一度、尋ねてみたことがあるんです。結局、一人もいませんでした。「そんなことでは、文化庁のあり方うんぬんを議論するのは難しいのでは」と、意識改革を訴えたことがあります。

 知識だけではなく、「体の教養」とでも言うべきものが必要です。実際に文化に触れ、体験することが大切。「体の教養」があれば、心に余裕ができ、他人への思いやりが生まれる。若い人には、お茶でもうたいでも何でもいいから、やってみなさいと伝えている。人々が色んな文化の体験を積み重ねて、思いやりの心を育むきっかけにしたい。それが、広義の意味で文化庁を京都にもってくる意義だと思います。京都は「文化首都だ」と、ええ格好していてはいけません。

 〈米ハワイ・真珠湾にあるアリゾナ記念館など、世界60か国以上を300回以上訪問し、茶道を通して平和の大切さを訴えてきた〉

 私は太平洋戦争で、特攻機の搭乗員として出陣し、生き残った1人。あの悲惨な戦争を身をもって体験したことで、平和が続いてほしいと心から思いました。でも、人類の争いは収まっていない。だからこそ各国を回り、「一●(いちわん)からピースフルネスを」の理念を訴え続けています。

 丸いお茶碗ちゃわんは地球です。お茶の緑は自然を表している。その中で暮らす人たちはみんな一緒の人類、地球人なのですよ。狭い地球の中で、何を争っているのですか、と。外国の方にも同じことを申し上げている。

 昭和の時代は戦争もあって、本当に波乱万丈だった。平成になってやや安定したが、大国の指導者は口では平和を唱えながら、自分の権力を誇示して全く逆の方向に進みつつある。この動きが大変残念ですね。

 平成の御代みよが終わるのは、心寂しい。新しい御代の到来とともに、若い人たちがそれぞれの立場で奮起していただくことを願いたい。チャレンジを繰り返し、失敗もするだろうが、その中から自分の生き方を見つけてほしい。(聞き手・今村正彦)

 ◇17年4月から一部業務

「地域文化創生本部」の開設を祝う文化庁や府、京都市の関係者ら(2017年4月、東山区で)
「地域文化創生本部」の開設を祝う文化庁や府、京都市の関係者ら(2017年4月、東山区で)

 中央省庁の地方移転は、「地方創生」や「東京一極集中の是正」を掲げる安倍政権が推進してきた。消費者庁や特許庁なども移転の検討対象に挙がったが、全面的な移転にめどが立ったのは文化庁だけだ。

 17年4月には、文化庁の一部の業務を京都で行う「地域文化創生本部」が東山区に開設された。移転先は同7月、4候補の中から改修費が最も安い府警本部本館(上京区)に決定。一部は隣接する府の新庁舎にも入居する。

 府警本部本館の耐震改修費や新庁舎建設費の入居該当分計32億円は府と市が折半し、年2億円の入居賃料のうち半額は府が負担する。府は府警本部本館の基本設計などを行った後、20年7月から21年度にかけて、同本館の耐震改修や新庁舎の建設工事を行う予定だ。

 ◆せん・げんしつ 1923年、京都市生まれ。同志社大卒。復員後、大徳寺で得度し、64年に十五代家元を継承。97年に文化勲章。2002年に長男に家元を譲り、玄室を名乗る。外務省参与、ユネスコ親善大使、日本・国連親善大使。

 ●は苑のくさがんむりを外し、下に皿

無断転載・複製を禁じます
60789 0 平成@Kyoto 2019/01/03 05:00:00 2019/01/03 05:00:00 茶道裏千家の千玄室・前家元(30日午前9時10分、京都市上京区で)=金沢修撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190102-OYTAI50076-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

新着クーポン

参考画像
ランチでご来店のお客様にジェラートをサービス
参考画像
アクティビティご利用でソフトドリンク1本サービス
参考画像
ご宿泊のお客様の夕食時に地酒(お銚子)またはソフトドリンク1本サービス

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ