<10>温暖化対策 意識高く

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自らも執筆に関わったIPCCの報告書を手にする松岡さん(下京区で)
自らも執筆に関わったIPCCの報告書を手にする松岡さん(下京区で)

 ◇京都大名誉教授 松岡譲さん68

 ◇努力・工夫 さらに必要

 地球温暖化は、平成を通して世界規模での深刻な課題であり続けた。今も模索が続く国際的な取り組みの出発点となったのが、先進国に温室効果ガスの排出削減を義務づけた「京都議定書」だ。温暖化研究の第一人者で、1997年の議定書採択の舞台裏を知る京都大名誉教授の松岡譲さん(68)の目には、この間の歩みがどう映っているのか。

 昨年末、温暖化対策を話し合う24回目の国際会議「COP24」で、産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑えるという厳しい目標の実施方法について真摯しんしな協議が行われました。議定書の採択にはこぎ着けたものの、各国が低い目標に終始した京都でのCOP3の頃を思うと、隔世の感があります。

 〈平成に入る直前の1988年、米航空宇宙局(NASA)の研究者が米国議会で温暖化を警告し、世界中で関心が高まった〉

 上下水道の研究が専門でしたが、国立公害研究所時代の仲間たちと地球環境の予測モデルの開発を始めました。国内ではこうした研究はほとんどなく、米国の論文などを読みながらの手探りの作業。エネルギーの消費状況など社会の動向と自然現象とを組み合わせ、ガスの排出量やその影響を予測するモデルが完成したのは94年のことです。

 〈95年にベルリンであった初会合(COP1)で、第3回会議までに先進国の温室効果ガスの削減目標を定めることが決まっていた。そのCOP3は97年に京都国際会館で開かれた〉

 会議を前に、考案した予測モデルを基に2010年には20年前との比較でCO2の排出を6~8%減らす案を環境庁(現・環境省)に提出しました。それを受け、6~7%削減の環境庁案が決まりましたが、政府案は2.5%の削減にとどまりました。削減に消極的な省庁との主導権争いの産物だったようです。

 いざ会議が始まると、私の研究室には政府や報道機関から「他国が高い数値目標を出している」「日本では可能なのか」などとひっきりなしに連絡が入り、計算に追われました。会議の結果、日本は6%の削減義務を負うことになり、「自分たちが世界の常識に近かったのかな」と報われた思いがしたものです。

 〈COP3を機に環境NGOの活躍が目立ち始め、「DO YOU KYOTO?」(環境にいいことをしていますか?)という言葉も広まった〉

 京都でも環境教育が盛んになり、小中学校の頃からエコバッグを使う教育をしたり、学区ごとに省エネの取り組みを競ったり、温暖化を身近な課題と考えるようになっています。歩行者と公共交通優先のまちづくりを目指す京都市の「歩くまち・京都」などの施策も見られます。ただ、東京都のように削減義務に違反した企業名を公表するなど、もう一歩踏み込んでもよいのではないでしょうか。

 平成の間に環境に対する意識は、確かに変わったと実感しています。一方で、2度未満の目標を達成するには今後50年間でガスの排出をゼロにする必要があり、本当の正念場を迎えます。市民も、企業も、政府も、危機感を共有し、これまで以上の努力と工夫をしなければなりません。

 (聞き手・古川恭一)

 

 ◇京の研究者 科学界で存在感

 各国の科学者らが参加し、地球温暖化の影響などを研究する「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、京都議定書策定の機運作りへの貢献も大きく、2007年にはノーベル平和賞を受賞した。

 京都からも松岡さんら何人もの科学者がIPCCに加わったが、京都の研究者は科学界で大きな存在感を示し続けている。

 京都大出身でノーベル賞自然科学3賞(生理学・医学、物理、化学)を受賞したのは、1949年に物理学賞を得た湯川秀樹博士から昨年の生理学・医学賞の本庶たすくさん(76)まで計7人で、国内の大学で最多。平成だけでも野依良治さん(80)(2001年化学賞)、赤崎勇さん(89)(14年物理学賞)ら3人を数える。

 それ以外にも2012年に生理学・医学賞を受賞した京大iPS細胞研究所所長の山中伸弥さん(56)の研究は、難病治療や創薬の分野で大きな広がりを見せる。また、島津製作所社員の田中耕一さん(59)が02年に化学賞を取った際は「サラリーマン研究者の受賞」として話題になった。

 塩瀬隆之・京都大准教授(技術史)は「千年の都の歴史に支えられた時節に流されない京都の気風が、今も中長期的視野で研究に没頭できる環境を生み、学界にも産業界にも優れた研究者が集まりやすい」と指摘している。

 

 ◆まつおか・ゆずる 1950年、愛知県生まれ。73年に京都大工学部を卒業し、国立公害研究所(現・国立環境研究所)の研究員や名古屋大教授などを経て、98年から2016年に定年退職するまで京都大教授。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書の執筆者などを務めた。

 

◎「平成@kyoto」は今回で終わります。

無断転載・複製を禁じます
19334 0 平成@Kyoto 2019/01/13 05:00:00 2019/01/21 13:30:07 自らや教え子らが関わって作ったIPCC報告書を手にする松岡さん(12月7日、京都市内の松岡さんの自宅で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190112-OYTAI50006-T.jpg?type=thumbnail

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